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生成AIの著作権侵害事例|国内外の訴訟から見る会社の注意点

生成AIの著作権侵害事例|国内外の訴訟から見る会社の注意点

社内で生成AIの画像や文章を使い始めた会社が押さえたい生成AIの著作権侵害事例は、作品を学習に使われた側がAI企業を訴えた事例と、生成物が既存の作品に似ていたことが争点になった事例の2つに分かれます。会社が当事者になりやすいのは、生成物を社外に出す後者です。

学習をめぐる訴訟は国ごとに判断が分かれ、2026年10月時点でも多くが係争中ですが、生成物の類似は、AIサービスの事業者の責任を認めた判決がすでに出ています。社員が入力した情報が外に出るリスクは著作権とは別の論点で、生成AI 情報漏洩 対策の考え方で整理しています。

この記事の要点は3つ

  1. 生成AIの著作権侵害事例は、学習データをめぐる事例と、生成物の類似をめぐる事例の2つの型に分けて読めます。2つの型は本記事の整理で、画像・文章・音声のいずれでも訴訟が起きています
  2. 学習が許されるかの判断は、国と事実関係で分かれています。米国では学習をフェアユースと認めた地裁の判断と、競合する法律検索AIの学習を、フェアユースと認めなかった控訴審の判断があり、ドイツでは歌詞の記憶を複製と認めた第一審判決が出ています
  3. 会社が同じことを起こさないために確かめるのは、生成物を外に出す前の類似の確認と、誰が確認したかの記録です。中国では、利用者の求めに応じて既存のキャラクターに似た画像を出したAIサービスの事業者が責任を問われました

社内で生成AIを使うときの確認の流れを整理したい方は、自社で使えるヒントを、20の実例から探すからご確認いただけます。

法人向けにAIの研修を提供している側から、判決・当事者の発表・信頼できる報道で確かめられた事例だけを、確認日つきで並べます。この記事は法的助言ではなく、個別の事案の判断は弁護士などの専門家に確かめてください。

この記事でわかること

  • 生成AIの著作権侵害事例を読む2つの型と、画像・文章・音声の分け方
  • 国内外の主な事例の一覧と、2026年10月19日時点の状態
  • 学習データをめぐる訴訟で、判断が分かれた点
  • 生成物の類似をめぐる事例で、誰が責任を問われたか
  • 事例から分かる、会社が生成物を外に出す前の確認点

生成AIの著作権侵害事例は2つの型に分かれる|学習データと生成物の類似

生成AIの著作権侵害事例は、AIを作る段階の「学習データ」をめぐる事例と、AIを使う段階の「生成物の類似」をめぐる事例の2種類に分かれ、この2つの型で読むと、自社に関係する事例を選びやすくなります。2つの型は本記事の整理で、実際の訴訟では1件の中で両方が争われることもあります。

型1|学習データをめぐる事例

学習データをめぐる事例は、作品の権利者が、作品を無断で集めてAIの学習に使ったとしてAI企業を訴えるものです。被告はAIを作った企業で、AIを使っているだけの会社が被告になった主な事例は、この記事の確認の範囲では見当たりません。

新聞社が記事の収集と回答への表示を訴えた事例も、この型に含めて扱います。争点は、学習や収集のための複製が、各国の法律の例外で許されるかどうかです。

型2|生成物の類似をめぐる事例

生成物の類似をめぐる事例は、AIが出した画像・文章・音声が、既存の作品に似ていることが争点になるものです。責任を問われる相手は、AIのサービスの事業者のこともあれば、生成物を使った人のこともあります。

型D・フロー型。生成AIで著作権が問題になる3つの段階で、誰が当事者になるかを左から右へ3つの箱で示す。各箱の大きな文字は当事者、段階名は小ラベル。要素=箱1「AI企業」=段階「学習」・作品を集めて学習させる・訴えられるのは主にAI企業/箱2「サービスの事業者」=段階「生成」・利用者の指示でAIが画像・文章・音声を出す・責任を問われた事例がある/箱3「使った会社」=段階「利用・公開」・生成物を広告や資料として社外に出す・当事者になりうる。箱2と箱3を青で強く、箱1は淡いグレー。各箱の上に小さなタグで、箱1に「型1=学習データ」、箱2と箱3に「型2=生成物の類似」。背景のパネルと下の括弧は置かない。大きな番号は置かない。結論=会社が当事者になりやすいのは、学習ではなく、生成物を作って社外に出す段階です。

会社が当事者になりやすいのは、学習ではなく、生成物を作って社外に出す段階です。


生成AIの著作権侵害事例の一覧|国・時期・争点・現在の状態

国内外の主な生成AIの著作権侵害事例は、学習データの型が6件、生成物の類似の型が4件、生成物そのものが守られる側になった事例が1件です。下の表は、当事者の発表・判決を伝える資料・信頼できる報道で確かめた範囲の抜粋で、すべての訴訟を網羅したものではありません。

ファクトボックス|この一覧の確かめ方

項目

内容

確認日

2026年10月19日

確かめた資料

当事者・権利者団体の発表、裁判所の判断を伝える法律事務所と報道機関の記事、警察の発表を伝える報道

出典URL

https://authorsguild.org/news/court-grants-final-approval-anthropic-copyright-settlement/ ほか(末尾の出典・注記に事例ごとに掲載)

状態の書き方

「係争中」=判決や和解が出ていない/「第一審判決」=控訴できる段階で確定していない/「和解」=裁判所が和解を承認した

注意

係争中の事例は、訴えた側の主張で、裁判所が認めた事実ではありません

免責

本記事は法的助言ではありません。自社の事案は専門家に確かめてください

学習データをめぐる事例(型1)

事例(国・時期)

媒体

争点

状態(2026年10月19日確認)

米国・2023年12月提訴|ニューヨーク・タイムズ 対 OpenAI・Microsoft

文章

提訴時の主張は、記事を無断で学習に使ったこと、記事に近い文章を出力すること

係争中(2026年6月に訴状を修正)

米国・2024年提訴|作家ら(Bartz ほか)対 Anthropic

文章

書籍の学習と、海賊版サイトから入手した書籍の保管

和解(2026年7月20日に最終承認)

米国・2020年提訴|Thomson Reuters 対 Ross Intelligence

文章

法律情報サービスの要約文を、競合サービスのAIの学習に使ったこと(生成AIではない)

控訴審判決(2026年9月・中間上訴。ROSSは連邦最高裁へ上訴する意向)

英国・2023年提訴|Getty Images 対 Stability AI

画像

写真の学習と、学習済みのモデルが侵害した複製物に当たるか

第一審判決(2025年11月4日)、控訴が許可された

ドイツ・2024年提訴|GEMA 対 OpenAI

音声(歌詞)

歌詞をモデルが記憶し、出力できる状態にあること

第一審判決(2025年11月11日)、確定していない

日本・2025年8月提訴|読売新聞、朝日新聞・日本経済新聞 対 Perplexity

文章

記事の無断の収集・保存と、回答への表示

係争中

生成物の類似をめぐる事例(型2)

事例(国・時期)

媒体

争点

状態(2026年10月19日確認)

中国・2024年2月判決|ウルトラマンの権利の許諾を受けた会社 対 画像生成サービスの事業者

画像

生成された画像が、ウルトラマンの複製・翻案に当たるか

判決(広州インターネット法院・2024年2月8日)

米国・2025年6月提訴|Disney・Universal 対 Midjourney

画像

自社のキャラクターに似た画像を生成・配信すること

係争中

米国・2024年提訴|声優2人(Lehrman・Sage)対 Lovo

音声

声の録音を使った音声のクローンと、録音の宣伝への利用

係争中(2025年7月に一部の請求を退ける判断)

ドイツ・2025年提訴|GEMA 対 Suno

音声

生成した楽曲が、6つの既存の曲に強く似ていたこと

第一審判決(2026年7月31日)、確定していない

生成物が守られる側になった事例

事例(国・時期)

媒体

争点

状態(2026年10月19日確認)

日本・2025年11月|生成AIで作られた画像を無断で複製し、販売する書籍の表紙に使った男性

画像

生成AIで作った画像が著作物に当たるか

書類送検(捜査段階・裁判所の判断は出ていない)

日本の事例は、裁判所が判断したものではなく、警察が著作物に当たると判断して書類送検した段階です。報道によると、警察は、画像が生成AIに具体的な指示を繰り返して作られたことを理由に挙げています。


学習データをめぐる事例|作品を学習に使われた側の訴訟

学習データをめぐる事例では、訴えられているのはAIを作った企業で、争点は学習のための複製が法律の例外で許されるかどうかです。判断が出た事例でも、どう集めたか・何に使ったかで結論が分かれています。

作家ら 対 Anthropic|学習と、入手の仕方を分けて判断した

米国の作家らは、Anthropicが書籍を無断でAIの学習に使ったとして、2024年にカリフォルニア北部地区の連邦地裁に訴えました。地裁は2025年6月、書籍を学習に使うこと自体と、購入した紙の書籍のスキャンはフェアユースに当たる一方、海賊版サイトから入手した書籍を保管し続けたことはフェアユースに当たらないと判断しました。

その後、当事者は15億ドルで和解し、同じ連邦地裁が2026年7月20日に和解を最終承認しています。学習そのものの判断と、入手の仕方の判断が分けて出された点が、この事例の特徴です。

Thomson Reuters 対 Ross Intelligence|競合するサービスの学習はフェアユースに当たらない

Thomson Reutersは、法律情報サービスの要約文を、競合する法律検索サービスのAIの学習に使われたとして、Ross Intelligenceを訴えました。連邦地裁は2025年2月にフェアユースに当たらないと判断し、第3巡回区の連邦控訴裁判所が2026年9月にこの判断を支持しています。

このAIは文章を生成するものではなく、判決を伝える記事も生成AIではない点を明記しています。それでも、学習のための複製をフェアユースと認めなかった控訴審の判断として、ほかの訴訟で参照される可能性があります。

Getty Images 対 Stability AI|英国では学習が国外だったことが効いた

Getty Imagesは、写真を無断で画像生成AIの学習に使ったとして、英国でStability AIを訴えました。高等法院は2025年11月4日の判決で、学習済みのモデルは作品の複製を保存していないとして、侵害した複製物を輸入・提供したという主張を退けています。

学習そのものを侵害とする主張は、学習が英国の外で行われたこともあり、Getty Images側が審理の途中で取り下げました。商標については一部の主張が認められ、侵害した複製物に当たるかの争点は控訴審へ進んでいます(2026年10月19日確認)。

GEMA 対 OpenAI|歌詞の記憶を複製と認めた

ドイツの音楽著作権の管理団体GEMAは、ChatGPTが歌詞を学習して記憶し、出力できる状態にあるとして、OpenAIをミュンヘン地方裁判所に訴えました。同裁判所は2025年11月11日、モデルに歌詞が記憶されていることは複製に当たり、テキスト・データマイニングの例外は及ばないと判断しています。

判決は確定しておらず、ドイツの通信社dpaは、控訴される見込みだと報じています(2026年10月19日確認)。学習の型の訴訟でありながら、生成物として歌詞が出てくることが判断の中心になった点で、2つの型の境目にある事例です。

新聞3社 対 Perplexity|日本の新聞社が回答への表示を訴えた

読売新聞は2025年8月7日、朝日新聞社と日本経済新聞社は同月26日に、AI検索のPerplexityを東京地方裁判所に訴えました。報道によると、朝日・日経の2社は、サイトで利用を拒む設定をしていたのに記事を取得され、有料の記事も含めて回答に表示されたと主張しています。

2社は、引用元として社名を示しながら記事と違う内容を表示したことも、信用を傷つける不正競争に当たると主張しています。どれも訴えた側の主張で、2026年10月19日の確認の範囲では判決は出ていません。

型B・対比型。学習をめぐる判断が分かれた例を左右に並べる。要素=左「学習・モデルを侵害と認めなかった判断」=米国の連邦地裁:書籍の学習そのものはフェアユース(作家ら 対 Anthropic・2025年6月)/英国の高等法院:学習済みのモデルは侵害した複製物に当たらない(Getty Images 対 Stability AI・2025年11月)/右「侵害と認めた判断」=米国の連邦控訴裁:競合サービスのAIの学習はフェアユースに当たらない(Thomson Reuters 対 Ross・2026年9月・生成AIではない)/ドイツの地方裁判所:歌詞の記憶は複製に当たる(GEMA 対 OpenAI・2025年11月)。4件とも同じ位置・同じ書式で現在の状態を1つずつ添える=Anthropic「その後和解(2026年7月承認)」/Getty「控訴審へ」/Ross「最高裁へ上訴の意向」/GEMA「確定していない」。左右とも同じ淡い青で、どちらも強くしない。下に共通の帯「どの判断も、集め方・使い道・国の法律の違いを前提にしている」を淡い青で置き、強い要素はタイトルの黄マーカー1つにする。中央の区切りやラベルは置かない。大きな番号は置かない。結論=学習が許されるかの判断は国と事実関係で分かれていて、1つの判決から全体の答えは出せません。

学習が許されるかの判断は国と事実関係で分かれていて、1つの判決から全体の答えは出せません。


生成物の類似をめぐる事例|画像・文章・音声で何が争われたか

生成物の類似をめぐる事例では、既存の作品に似たものを生成した責任が、AIのサービスの事業者に問われた判決が出ています。会社がAIを使う側として読むなら、どんな指示で、何に似たものが出て、誰が止められたかに注目します。

生成AIの著作権侵害が認められた判決|中国のウルトラマン画像の事例

中国の広州インターネット法院は2024年2月8日、画像生成サービスが出したウルトラマンの画像について、サービスの事業者の責任を認める判決を出しました。訴えたのは、中国でウルトラマンの権利の許諾を受けた会社です。

判決を伝える法律事務所の記事によると、裁判所は、生成された画像の一部はウルトラマンの作品と同じか実質的に似ていて複製に当たり、元の表現を残して新しい特徴を加えた画像は無断の翻案に当たると判断しました。あわせて、権利者が申し立てる仕組みや、利用規約での注意、生成物の表示といった、中国の生成AIの規則が求める対応が足りなかった点も挙げています。

この事例で責任を問われたのはサービスの事業者で、指示を入れた利用者ではありません。ただ、既存のキャラクターに似た画像が利用者の求めに応じて出てくる状態だったことが問われており、会社の社員が似た画像を作って社外で使えば、使った側の問題になりえます。

Disney・Universal 対 Midjourney|キャラクターの生成を映画会社が訴えた

DisneyとUniversalは2025年6月、画像生成AIのMidjourneyを、カリフォルニア中部地区の連邦地裁に訴えました。報道によると、スター・ウォーズやシンプソンズ、ミニオンズなどのキャラクターに似た画像を生成・配信し、停止の求めに応じなかったと主張しています。

大手の映画会社が画像生成AIを訴えた事例として注目されていますが、2026年10月19日の確認の範囲では判決は出ていません。係争中のため、Midjourneyが侵害したと裁判所が認めた事実はありません。

GEMA 対 Suno|生成した楽曲が既存の曲に似ていた

GEMAは、音楽を生成するAIのSunoも訴えています。報道によると、GEMAが6曲の歌詞・曲名・曲調だけを入れて生成させたところ、元の曲に強く似た楽曲が出てきたと主張しました。

ミュンヘン地方裁判所は2026年7月31日、Sunoが保護された楽曲を許諾なく複製したと認め、停止を命じました。判決は確定しておらず、Sunoは控訴を検討していると報じられています(2026年10月19日確認)。

声優2人 対 Lovo|声そのものは著作権の対象にならなかった

米国の声優2人は、仕事として録音した声を使って音声のクローンを作られ、販売されたとして、AIの音声サービスのLovoを訴えました。ニューヨーク南部地区の連邦地裁は2025年7月、著作権が守るのは録音そのもので声そのものではないとして、音声のクローンを侵害とする請求を退けています。

一方で、声優の実際の録音を宣伝に使ったという請求や、ニューヨーク州法の肖像・声の権利に基づく請求、契約違反の請求は続いています(2026年10月19日確認)。声の複製は、著作権より、本人の声の権利や契約の問題として争われやすいことが分かる事例です。

生成物の類似をめぐる事例では、既存の作品に似たものが利用者の指示に応じて出てくること自体が争点になっています。

社内で生成AIを使うときも、既存のキャラクター名・作品名・作家名・歌手名を指示に入れる使い方は、類似が生まれやすい使い方として扱います。


生成AIの著作権の判例の読み方|国・段階・事実関係の3つを確かめる

生成AIの著作権の判例を社内の説明に使うときは、どの国の判断か、確定した判断か、どんな事実を前提にした判断かの3つを確かめてから引用します。見出しだけを引くと、1つの事例の結論が、生成AI全体の答えのように広がって伝わるためです。

1. どの国の法律で判断されたか

米国はフェアユース、ドイツはテキスト・データマイニングの例外、英国は侵害した複製物に当たるかと、同じ「学習」でも当てはめる法律が国ごとに違います。日本の会社が日本で生成物を使う場面では原則として日本の著作権法で判断され、海外の判決は日本での結論を示すものではありません。

2. 確定した判断か、途中の判断か

和解が承認されたのは作家ら 対 Anthropicだけで、Thomson Reuters 対 RossもROSSが連邦最高裁へ上訴する意向を示しており、GEMAの2つの訴訟とGetty Imagesの訴訟は第一審の判断のため、どれも確定はしていません。係争中の事例は訴えた側の主張しか出ていないため、社内の資料で「〜が侵害した」と書くと、裁判所が認めていない事実を断定することになります。

3. どんな事実を前提にした判断か

作家ら 対 Anthropicは学習という使い方と、海賊版サイトからの入手・保管で結論が分かれ、Thomson Reuters 対 Rossは生成AIではないAIで、競合するサービスを作るための学習だった点が判断の前提です。判例を引用するときは、判断の前提になった事実を1行で添えます。


日本で生成AIの著作権侵害が問われる場面|類似性と依拠性

日本で生成物が著作権侵害かどうかは、生成AIを使わない場合と同じく、既存の作品との類似性と依拠性で判断されるというのが、文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月15日にまとめた「AIと著作権に関する考え方について」の整理です。学習の段階と生成・利用の段階を分けて考える文化庁の考え方の要点は、生成AIと著作権|文化庁の考え方の要点と会社で守る3つのことで扱っています。

類似性と依拠性|海外の事例を日本の言葉に置き換える

類似性は既存の作品の表現の特徴が感じ取れるか、依拠性は既存の作品をもとにしたかという問いで、詳しい判断の仕方は上の記事で扱っています。

ウルトラマンの画像の事例やGEMA 対 Sunoで争われた「既存の作品に似たものが出た」という点は、日本の言葉に置き換えると、類似性と依拠性の問題に当たります。ただし、日本の裁判所が同じ事実をどう判断するかは、海外の判決からは分かりません。

生成AIで作ったものが守られる側になることもある

2025年11月の書類送検の事例では、警察は、生成AIに具体的な指示を繰り返して作られた画像を著作物と判断しました。社内で生成AIを使う会社にとっては、他人がAIで作った画像も、無断で流用してよい素材とは限らないことを示しています。

この事例は捜査の段階で、裁判所が著作物に当たると認めたものではありません。生成AIで作ったものがどこまで著作物になるかは、文化庁の考え方でも、人の創作的な関与があるかどうかで個別に判断するとされています。


事例から分かる会社の注意点|生成物を外に出す前の確認

事例から会社が引き出せる注意点は、主に6つです。6つは本記事の整理で、どれも下の表の右の列の事例を1つずつ根拠にしており、事例が示す範囲を超えた約束はしません。

事例と1対1で対応する6つの注意点

誰が確かめて出したかを残しておくことが、どの注意点にも共通する土台になります。

注意点

裏づける事例

事例から言えること

1. 既存の作品名・キャラクター名・曲名を指示に入れた生成物を社外に出さない

GEMA 対 Suno

曲名・歌詞・曲調を入れて生成させると、元の曲に強く似た楽曲が出たと権利者が主張し、第一審で複製が認められた

2. 社外に出す生成物は、似た作品がないかを人が確かめ、確かめた人を記録する

ウルトラマンの画像の事例

生成された画像が既存の作品の複製・翻案に当たると判断された

3. 使うサービスが、権利者からの申し立てにどう応じるかを規約で確かめる

Disney・Universal 対 Midjourney

権利者は、停止の求めに応じなかったことを訴えの理由の1つに挙げている(係争中)

4. 人の声や話し方を再現する使い方は、本人の許諾と契約の範囲を確かめる

声優2人 対 Lovo

声そのものは著作権の対象外とされたが、州法の声の権利と契約の請求は続いている

5. 他人がAIで作った画像も、無断で流用しない

2025年11月の書類送検の事例

生成AIで作った画像を著作物と判断した捜査の例がある(裁判所の判断ではない)

6. 自社でAIを作る・調整する場合は、学習に使うデータの入手経路を記録する

作家ら 対 Anthropic

学習そのものと、海賊版サイトからの入手が分けて判断された

注意点6は、自社でAIのモデルを作ったり、自社のデータで調整したりする会社に限った話です。市販の生成AIを使うだけの会社は、1〜5を先に確かめます。

確認を社内の流れに入れる

社外に出す生成物だけは、出す前に確認する人を決め、確認した日と人を残す流れにしておくと、似た作品が後から見つかったときにも経緯を説明できます。確認の手順は生成AIと著作権|文化庁の考え方の要点と会社で守る3つのこと、社内ルールの中に置く場所は生成AI社内ルールのサンプル|禁止事項リストにしない4層のガイドラインで扱っています。

事例から会社が持ち帰るのは、訴訟の勝ち負けではなく、生成物を社外に出す前に誰が確かめたかを残す習慣です。

生成物の確認を、社内の業務の流れにどう組み込むかを整理したい方は、自社で使えるヒントを、20の実例から探すもご利用ください。

自社で使えるヒントを、20の実例から探す


生成AIの著作権侵害事例で、この記事が扱わないこと

この記事は、確かめられた事例を型で並べ直したもので、扱わないことがあります。

  • 個別の事案の法的な判断:自社の生成物が侵害に当たるかは、事実関係で変わります。弁護士などの専門家に確かめてください
  • すべての訴訟の網羅:米国を中心に、生成AIをめぐる訴訟はほかにも多数あります。この記事は型ごとの主な事例の抜粋です
  • 係争中の事例の見通し:判決の予想はしません。状態は2026年10月19日時点で確かめたものです
  • 商標・肖像・不正競争:一覧の事例の中には商標や声の権利、不正競争も争われているものがありますが、この記事は著作権を中心に扱います
  • 当社の受講企業の事例:載せていません。この記事の注意点は、公表された事例から引き出したものです

係争中の事例は、判決や和解で状態が変わります。社内の資料に引用するときは、引用する日に当事者の発表や報道で状態を確かめ直してください。


生成AIの著作権侵害事例に関するよくある質問

Q. 生成AIを使っただけの会社が訴えられた事例はありますか

A. この記事で確かめた主な訴訟では、訴えられているのはAIを作った企業やサービスの事業者です。 一方で、2025年11月には、他人が生成AIで作った画像を無断で複製して書籍の表紙に使った人が書類送検されています。生成物を社外に出せば、使った側が当事者になる可能性があります。

Q. 係争中の事例を社内研修の資料に載せてよいですか

A. 載せられますが、訴えた側の主張として書きます。 係争中の事例は裁判所が認めた事実ではないため、「〜が侵害した」と断定すると、認められていない事実を書くことになります。判決や和解で状態が変わるので、資料に引用する日に当事者の発表や報道で状態を確かめ直します。

Q. 係争中の事例の最新の状態は、どこで確かめればよいですか

A. 当事者の発表と、判決や和解を伝える報道で確かめます。 和解は裁判所の承認、判決は確定したかどうかまで確かめると、社内の説明で状態を取り違えません。日本の考え方は、文化庁の著作権のページにある「AIと著作権に関する考え方について」で確かめられます。

Q. 海外の判決は、日本の会社にも当てはまりますか

A. 日本の会社が日本で生成物を使う場面では、原則として日本の著作権法で判断されます。 海外の判決は、どんな事実が争点になるかを知る参考にはなりますが、日本での結論を示すものではありません。ただし、海外に向けて生成物を出す場合は、その国の法律が関わります。


生成AIの著作権侵害事例|総括表

型

主な事例

事例から分かること

会社が確かめること

学習データ

作家ら 対 Anthropic、Thomson Reuters 対 Ross、Getty Images 対 Stability AI、GEMA 対 OpenAI

学習が許されるかは国と事実関係で判断が分かれている

自社でAIを作る場合だけ、データの入手経路を記録する

生成物の類似(画像)

ウルトラマンの画像の事例、Disney・Universal 対 Midjourney

既存のキャラクターに似た画像の生成が争点になる

作品名を指示に入れない・社外に出す前に人が確かめる

生成物の類似(音声)

GEMA 対 Suno、声優2人 対 Lovo

楽曲の類似は複製とされた例があり、声は契約や声の権利で争われる

曲名や人の声を再現する使い方の許諾と契約を確かめる

生成物が守られる側

2025年11月の書類送検の事例

AIで作った画像も著作物と判断された捜査の例がある

他人のAI生成物を無断で流用しない

型の分け方と確かめることの組み合わせは本記事の整理で、ほかの分け方を否定するものではありません。



まとめ|生成AIの著作権侵害事例から、会社は何を確かめればよいか

生成AIの著作権侵害事例から会社が確かめるのは、学習をめぐる訴訟の勝ち負けではなく、自社が生成物を社外に出す前に、似た作品がないかを誰が確かめたかです。学習の型の訴訟は主にAI企業が当事者で、会社が当事者になりやすいのは生成物の類似の型です。

事例を社内で生かすなら、次の3つから始められます。

  1. 今日:この記事の一覧から、自社が使う媒体(画像・文章・音声)の事例を1つ探し、争点と状態を確かめる
  2. 今週中:社内で生成AIの生成物を社外に出している業務を書き出し、出す前に確かめる人が決まっているかを見る
  3. 今週中:確かめる人と、確かめた日と名前を残す場所を決める

最後に、社内で自分に問える1問を置きます。御社で直近に社外へ出した生成AIの画像や文章について、似た作品がないかを誰が確かめたかを答えられますか。

  • 生成AIの著作権侵害事例は、学習データをめぐる事例と、生成物の類似をめぐる事例の2つの型に分けて読めます。2つの型は本記事の整理で、画像・文章・音声のいずれでも訴訟が起きています
  • 学習が許されるかの判断は、国と事実関係で分かれています。米国では学習をフェアユースと認めた地裁の判断と、競合する法律検索AIの学習を、フェアユースと認めなかった控訴審の判断があり、ドイツでは歌詞の記憶を複製と認めた第一審判決が出ています
  • 会社が同じことを起こさないために確かめるのは、生成物を外に出す前の類似の確認と、誰が確認したかの記録です。中国では、利用者の求めに応じて既存のキャラクターに似た画像を出したAIサービスの事業者が責任を問われました

生成物を社外に出す前の確認を、社内の流れとして整理したい方は、自社で使えるヒントを、20の実例から探すからご確認いただけます。

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出典・注記


この記事について

本記事は、法人向けにClaude Codeの研修を提供するDAIJOBUが、生成AIの著作権侵害事例を、当事者の発表・判決を伝える資料・報道に沿って型で整理したものです。法的助言ではありません。

著者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修部 コンテンツ担当 佐藤 雅俊

編集責任者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修 事業責任者 石井 雄大

監修

DAIJOBU株式会社 代表取締役 山中 裕貴

公開日

2026年10月23日

最終更新日

2026年10月23日

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