「社員にAIを使わせる研修を、リスキリング研修として組みたい」と考えている会社が最初に決めるのは、教材でも講師でもなく、誰のどの職務を新しい作業に変えるかです。
本記事では、職種を問わずデジタルの共通知識を全員に揃える研修をDX研修と呼びます。リスキリング研修とは目的が違うので、設計の順番も助成金の扱いも変わります。
リスキリング研修は、事業の変化に合わせて社員に新しい職務のスキルを身につけさせる研修で、職種を問わず共通知識を揃えるDX研修とは目的が違います。
この記事の要点は3つ
- リスキリング研修は、受講者の職務が変わる前提で組む研修です。職種を問わず全員に共通知識を揃えるDX研修とは、対象者と到達点の置き方が違います
- 会社が設計する要素は、対象者・到達点・形式・助成金の4つです。決める順番もこのとおりで、助成金は最後に当てます
- 助成金の対象と対象外の線も、特定の職務に直結するかどうかで引かれています。厚生労働省は、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練を対象外の例に、営業担当者向けに提案書の作成を学ぶ訓練を対象の例に挙げています
リスキリング研修の設計は、対象者・到達点・形式・助成金の順に決め、助成金は最後に当てます。
対象者と人数が決まっている方は、企業規模から実質負担の目安を先に出せる料金試算(助成金対応)をご利用ください。
本記事は、非エンジニアの社員向けにClaude Codeの法人研修を提供し、助成金の要件に合わせてカリキュラムを組んでいる側から書いています。対象は、会社が費用を払って社員に受けさせる研修を検討している会社で、社員が自分の費用で受ける学び直しには当てはまりません。
研修の場や商談で、お客様からよく出る問いがあります。
「エンジニアじゃなくても使える?」
「料金はいくらかかる?」
「AIの成果物は誰が責任を持つ?」
3つとも、研修の名前や教材だけでは答えが出ません。誰がどの作業に使うかは対象者で、実質負担がどこまで下がるかは形式と助成金で、成果物のどこを人が確かめるかは到達点で決まります。
助成金側の要件(率・上限・対象になる訓練の線引き・期限)は、事業展開等リスキリング支援コースとは|AI研修で使う条件と流れにまとめています。この記事は、その要件に合う研修を会社の側で設計するための順番を扱います。
この記事でわかること
- リスキリング研修の定義と、リカレント教育・学び直しとの違い
- リスキリング研修とDX研修の違いが「職務が変わるかどうか」にあること
- 会社が設計する4要素(対象者・到達点・形式・助成金)と、決める順番
- 対象者を職務で選ぶ理由と、到達点を「その職務の作業ができる」で書く方法
- 形式ごとの助成の扱いと、訓練時間から除かれる中身
- 4要素では決まらないことと、DAIJOBUがどう置いているか
目次
- リスキリング研修とは|職務が変わる前提で、新しい職務のスキルを身につけさせる研修
- リスキリング研修とDX研修の違い|デジタルの知識を足すのか、職務を変えるのか
- 会社が設計する4要素|対象者・到達点・形式・助成金の順に決める
- 要素①対象者|変える職務を担当する人で選ぶ。階層や部署で選ばない
- 要素②到達点|「知っている」ではなく「その職務の作業ができる」で書く
- 要素③形式|OFF-JTで実訓練10時間以上を、どの実施方法で組むか
- 要素④助成金|最後に当てる。率と上限は訓練時間と企業規模で変わる
- 4要素で解けないこと|支給の審査・開発目的・全社員向けの共通知識
- リスキリング研修に関するよくある質問
- リスキリング研修の要点|総括表
- あわせて読みたい
- まとめ|リスキリング研修はDX研修と何が違い、何で決まるのか
リスキリング研修とは|職務が変わる前提で、新しい職務のスキルを身につけさせる研修
リスキリング研修は、受講者の職務が変わる前提で、会社が新しいスキルを身につけさせる研修です。本記事で「職務が変わる」と書くときは、職種が変わることに限らず、経済産業省の定義の後半にある「今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化」、つまりその職務の作業のやり方が今の延長線上では身につかない形に組み替わることを含めます。
「リスキリング」の定義には、経済産業省の「デジタル時代の人材政策に関する検討会」第2回(2021年2月26日)で、リクルートワークス研究所の委員が示した次の文があります。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること
(出典=経済産業省 第2回デジタル時代の人材政策に関する検討会 資料2-2「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」2021年2月26日・2026年9月24日参照)
この定義には主語が2つあります。「獲得する」本人と、「獲得させる」会社です。
同じ資料は、リスキリングに一義的に責任を負うのは企業だという認知を広げたい、とも書いています。リスキリング研修は後者で、会社が事業の変化を見越して、社員の職務に新しいスキルを足す側の取り組みです。
「学び直し」全般とは違う|文部科学省の整理では、職務の延長線上で身につくかどうかで分かれる
「学び直し」を指す言葉はほかにもあります。文部科学省は、生涯学習分科会の議論の整理をもとに、リカレント教育を広い意味で使い、その中に2つの学びを置いています。
言葉 | 文部科学省の整理 | 会社の研修で言うと |
|---|---|---|
アップスキリング | キャリアチェンジを伴わずに現在の職務を遂行する上で求められる能力・スキルを追加的に身に付けること | 今の職務に知識や技能を足す研修 |
リスキリング | 現在の職務の延長線上では身に付けることが困難な時代のニーズに即した能力・スキルを身に付けること | 職種が変わるか、職務の作業のやり方が大きく組み替わる前提の研修 |
リカレント教育 | 上の2つの双方を含み、職業とは直接的には結びつかない技術や教養等に関する学び直しも含む広義の言葉 | 個人の学び直しも会社の研修も含む、いちばん広い言葉 |
(出典=文部科学省 総合教育政策局生涯学習推進課「大学等がリカレント教育に取り組む意義と推進に向けた方向性」p.2。第11期生涯学習分科会における議論の整理より・2026年9月24日参照)
言葉の包み方は資料で違います。経済産業省の検討会資料は、リカレント教育を「職を離れる」ことが前提の学び方としてリスキリングと区別しています。どちらの資料も、リスキリングを職務の変化と結びつけている点は同じです。
リスキリング研修とアップスキリングの研修を分けるのは、テーマではなく「今の職務の延長線上で身につくかどうか」です。
同じ「生成AI」というテーマでも、今の職務に使い方を足すだけならアップスキリングで、職務の作業そのものを組み替える前提ならリスキリングです。この線引きは、次の章で扱うDX研修との違いにそのまま重なります。
助成金の側から見た「リスキリング」|対象の訓練を職務・業務に結びつけている
会社が研修費に助成金を当てるとき、厚生労働省の助成制度にも、対象になる訓練の線があります。人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コースは、「新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、事業主が雇用する労働者に対して新たな分野で必要となる知識及び技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合等に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度」と説明されています。
対象になる訓練は、①事業展開に伴う訓練、②企業内のDX化・GX化に関連する業務に従事させる上で必要となる訓練、③人事・人材育成の計画に基づき今後従事する予定の職務に必要となる訓練の3つで、どれも「新たな分野」「関連する業務」「今後従事することが予定される職務」のように、職務や業務に結びついた書き方になっています。
(出典=厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 表紙・p.13・2026年9月24日参照。要件の全体はピラー記事で扱っています)
経済産業省・文部科学省・厚生労働省の資料は3つとも、リスキリングを特定の職務・業務と結びつけて書いています。厚生労働省の3類型のうち、今と異なる職務に就くことを要件にしているのは③だけで、②のDX化に関連する業務の訓練は今の職務のままでも対象の類型に入ります(詳細版 p.13)。
特定の職務・業務との結びつきを外して「デジタルの知識を学ぶ研修」全般をリスキリング研修と呼ぶと、次の章で見るDX研修との区別がつかなくなります。
リスキリング研修とDX研修の違い|デジタルの知識を足すのか、職務を変えるのか
リスキリング研修とDX研修の違いは、受講者の職務を変えるかどうかにあります。生成AI・データ活用・ITツールは、どちらの研修にも出てきます。
「DX研修」という言葉に、公的な資料で決まった定義は見当たりません。参照点になるのは、経済産業省とIPAの「デジタルスキル標準」で、2026年4月16日公表のver.2.0は、全てのビジネスパーソンが身に付けるべきスキルを定義した「DXリテラシー標準」と、DXを推進する人材の役割および必要なスキルを定義した「DX推進スキル標準」の2つで構成されています(出典=IPA「デジタルスキル標準ver.2.0を公開」2026年4月16日・2026年9月24日参照)。
本記事では、前者の「全員向けの共通知識」を揃える研修をDX研修と呼んで区別します。DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を、職種を問わず揃える研修です。
観点 | DX研修(共通知識を足す) | リスキリング研修(職務を変える) |
|---|---|---|
目的 | 全員の共通言語をつくる。職種を問わず共通知識を揃える | 事業の変化に合わせて、特定の職務の作業を新しくする |
対象者 | 職種を問わず全員 | 変える職務を担当する人 |
到達点 | 概念と用語が分かる。ツールを触れる | その職務の作業を、新しいやり方でできる |
助成金の扱い | 職業人として共通して必要な内容は、事業展開等リスキリング支援コースの対象外の例に当たる | 特定の職務に直結する内容が対象の例に当たる |
リスキリング研修とDX研修の違いは、テーマではなく、受講者の職務が変わるかどうかで決まります。
同じ生成AIの研修でも、名前ではなく中身と受講者で分かれる
この線が助成金の線と重なることは、厚生労働省の改正リーフレットが具体例で示しています。2026年8月3日の改正で、DX化・GX化に関する訓練のうち「職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの」と「職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要なるもの」が助成対象外と明記されました。
具体例は生成AIです。「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」は、特定の業務への具体的適用を伴わない汎用的内容であるため助成対象外とされています。「生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練」は、営業担当者の具体的な業務に直結しており、そのまま活用可能な内容であるため助成対象とされています。
「DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練」も、共通知識の習得にとどまるため対象外の例に挙がっています。
(出典=厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正」p.1・2026年9月24日参照)
汎用的なプロンプトの作り方は、本記事の言葉で言えばDX研修の側です。 営業担当者向けの提案書作成は、営業という職務の作業のやり方を組み替えるので、リスキリング研修の側です。教材が同じ生成AIでも、対象者と到達点の置き方で、どちらの研修になるかが決まります。
DX研修が要らないわけではない|順番と役割を分ける
DX研修を否定しているのではありません。全員の共通言語がないと、職務を変える研修の中で用語の説明に時間が消えます。 役割が違うだけです。
順番は、共通知識を先に短く揃え、そのあとで職務を変える研修を対象を絞って行う形が組みやすいです。職務を変える研修の側は、OFF-JTで時間を確保します。
反対に、両方を1つの研修に混ぜると2つのことが起きます。共通知識の時間は助成金の実訓練時間から除かれ、対象者が全員一律になるため受講者の選定の観点で崩れます。ここから先は、会社が設計する4要素の話になります。
会社が設計する4要素|対象者・到達点・形式・助成金の順に決める
リスキリング研修を会社が設計するとき、決めることは4つに絞れます。対象者、到達点、形式、助成金です。研修会社を選ぶのは、この4つが埋まったあとです。
要素 | 会社が決めること | 決めないまま進めると起きること |
|---|---|---|
①対象者 | どの職務の誰を受けさせるか | 全員一律になり、受講者の選定の観点で助成の判定が崩れる。業務に当たらない人が席を埋める |
②到達点 | その職務のどの作業が、研修後に新しいやり方でできるか | 「理解した」で終わり、業務が変わらない。カリキュラムが概念説明に寄る |
③形式 | OFF-JTで実訓練10時間以上を、通学制・同時双方向型・eラーニングのどれで組むか | 除外される時間で10時間を割る。eラーニングの回数制限に当たる |
④助成金 | どのコースの率と上限で実質負担を試算するか | 率だけで予算を組み、上限で助成額が頭打ちになり、審査で不支給になることもある |
順番に根拠があります。厚生労働省の改正リーフレットは、助成の判定の観点を3つの問いで示しています。
特定の職業、または職務に必要となる知識・技能を習得するためのものか。マナー、リテラシー、概念理解にとどまっていないか。訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか。
(出典=厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について」p.1・2026年9月24日参照)
3つの問いのうち2つは到達点で、1つは対象者で答えます。
3つの問いが見ているのは、研修の名前ではなく、誰が何をできるようになるかです。形式の要件は要素③で扱います。
助成金から逆算せず、対象者と到達点を先に決めた研修は、制度の3つの問いに自然に答えられる形になります。
要素①対象者|変える職務を担当する人で選ぶ。階層や部署で選ばない
リスキリング研修の対象者は、変える職務の作業を実際に担当している人です。経済産業省の定義に戻ると、リスキリングは「新しい職業に就くため」か「今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するため」のもので、どちらも主語は職務を持つ人です。
助成金の側でも、対象者は職務で見られます。改正リーフレットは、CO₂排出量の算定手順を学ぶ同じ訓練でも、算定業務の担当者が受ければ対象、人事や営業の担当者が受ければ対象外という例を挙げています。
同じ訓練でも、名簿で結論が変わります。例の詳細は、事業展開等リスキリング支援コースとは|AI研修で使う条件と流れで扱っています。
(出典=厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について」p.1・2026年9月24日参照)
役職で見ると「未経験の経営層」が並び、職務で見ると業務が並ぶ
DAIJOBUが研修前に受講者へ行っているヒアリングのある回では、受講者の大半がコマンドライン未経験で、役員や本部長級が中心でした。それでも、持ち帰りたいこととして最も多く挙がったのは「自分の業務で実際に使えるレベルまで習熟したい」でした。
役職で並べると「未経験の経営層」に見える人たちも、職務で並べると、資料作成、データの集計、予実の管理、部署をまたいだ調整と、それぞれ時間を取られている作業を持っています。対象者を決める単位は、役職でも部署でもなく、その人が持っている作業です。
リスキリング研修の対象者は、研修後にその作業を続ける人の中から、職務の作業で選びます。
基準 | なぜ要るか | 該当しない例 |
|---|---|---|
変える職務の作業を実際に担当している | 訓練内容と受講者の職務の一致が、助成の判定でも到達点の確認でも見られるため | 枠が余ったので、他部署から人数合わせで加える |
研修後もその作業を担当する予定がある | 到達点をその人の業務で確かめるため | 異動や退職が決まっている人を、記念として受けさせる |
雇用保険の被保険者である | 事業展開等リスキリング支援コースの受講者の要件のため | 被保険者でない役員だけで受講する |
実訓練時間の8割以上に出られる日程を組める | 通学制・同時双方向型の通信訓練では、8割以上の受講が支給の条件のため | 全4回のうち半分しか出られない人を名簿に載せる |
(受講時間の8割要件と被保険者要件の出典=厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 p.13・p.17・2026年9月24日参照)
役員を受けさせたい場合も、肩書きではなく雇用保険の被保険者かどうかで決まります。事業主・訓練・受講者の3方向の条件と、申請が落ちやすい理由は、人材開発支援助成金の条件とは|AI研修で通る要件と落ちる4つの理由に分けて書いています。
対象者が職務で決まると、次の到達点は「その職務のどの作業か」を書くだけになります。
要素②到達点|「知っている」ではなく「その職務の作業ができる」で書く
リスキリング研修の到達点は、受講者の職務の作業を主語にして、研修後に何が新しいやり方でできるかを1文で書いたものです。「生成AIを理解する」は到達点になりません。
書き方の型は1つです。「{職務}の{作業}を、{AIに任せる範囲}まで任せ、{人が残す確認}を行える」。
厚生労働省が対象の例に挙げた「営業担当者向けに、商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ訓練」は、この型で書けます。営業担当者が、提案書の構成案と文章の初稿をAIに作らせ、修正して提出できる、という形です。
到達点の書き方 | 例 | 起きること |
|---|---|---|
テーマで書く | 生成AIを理解し、活用できるようになる | 概念説明にカリキュラムが寄る。対象外の例に近づく |
ツールで書く | 生成AIツールの基本操作を覚える | 操作説明で終わり、職務の作業に戻れない |
職務の作業で書く | 営業担当者が、提案書の構成案と初稿をAIに作らせ、修正して提出できる | 演習が職務の作業になる。①の対象者とずれていないかも確かめられる |
到達点を職務の作業で書くと、演習の題材と助成の判定が同じ文から決まり、①の対象者とずれていないかも確かめられます。
到達点は研修会社ではなく、受講する会社の業務から書く
到達点を研修会社のカリキュラムから写すと、テーマの書き方に戻ります。DAIJOBUの研修では、開講前に受講企業へ「研修で扱いたい業務を3〜5個」と、機密を含まないサンプル資料の準備をお願いしています。演習の題材を受講者の実際の作業にするためです。
DAIJOBUは営業・採用・バックオフィスを含む20名以上が日常業務でClaude Codeを使っている組織で、研修では実際に使っているルールや手順を、受講企業の業務に合わせて渡しています。
研修の各回にも修了条件を置き、「理解した」ではなく「できるようになった」を判定の基準にしています。
ここで1つ限界を書きます。DAIJOBUでは、到達点に届いたかを満足度のアンケートではなく、研修と研修のあいだに受講者が自分で動かした回数で見ていますが、その追い方と実数はこの記事では扱いません。
改正リーフレットの3つの問いを、到達点の検査に使う
書いた到達点は、前章の3つの問いの前2つで検査できます。特定の職務に必要なものか、概念理解にとどまっていないか、の2つです。
「誰の、どの作業が、どう変わるか」が1文に入っていれば、2つとも答えられます。 入っていなければ、DX研修の側に戻っています。
到達点が書けると、必要な時間と形式が決まります。
要素③形式|OFF-JTで実訓練10時間以上を、どの実施方法で組むか
リスキリング研修の形式は、到達点に必要な時間を、対象外の時間を除いて確保できるかで選びます。助成金を当てるなら、形はOFF-JTで、実訓練時間数が10時間以上であることが要件です。
言葉を揃えます。厚生労働省の能力開発基本調査では、OFF-JTを「業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)」、計画的なOJTを「日常の業務に就きながら行われる教育訓練(OJT)のうち、教育訓練に関する計画書を作成するなどして教育担当者、対象者、期間、内容などを具体的に定めて、段階的・継続的に実施する教育訓練」と説明しています(出典=厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」用語の説明 p.1・p.2・2026年9月24日参照)。事業展開等リスキリング支援コースの対象はOFF-JTで、日常の業務の中で教えるOJTは対象になりません。
OFF-JTの形は多くの事業所にあり、足りないのは指導する人と時間
同じ調査の事業所調査(常用労働者30人以上を雇用する事業所が対象・調査対象7,194事業所・有効回答率54.2%)で、正社員に対してOFF-JTを実施した事業所は70.9%でした(前回71.6%。出典=同「結果の概要」p.17・2026年9月24日参照)。ただしこの数字は研修の中身を問わないので、リスキリング研修の実施率ではありません。
同じ調査で能力開発や人材育成の問題点の内訳を見ると、「指導する人材が不足している」が最も多く、「人材を育成しても辞めてしまう」「人材育成を行う時間がない」が続きます(複数回答。出典=同 p.24・2026年9月24日参照)。
調査から読めるのは、形式より教える人と時間が足りない事業所が多いことです。 形式を選ぶときは、この2つを外部で補えるかで見ます。
実施方法 | 厚生労働省の区分 | 助成の扱い |
|---|---|---|
集合・対面 | 通学制(教育訓練機関に通学し対面で受講) | 経費助成と賃金助成の両方。受講者は実訓練時間数の8割以上の出席が条件 |
オンラインで質疑応答あり | 同時双方向型の通信訓練 | 通学制と同じ区分。賃金助成の対象 |
各自が動画で学ぶ | eラーニング(LMS等で進捗管理できるもの) | 経費助成のみ。上限も通学制より低い。改正後の計画届では1人につき1年度1回まで |
日常業務の中で教える | 計画的なOJT | このコースでは対象外(OFF-JTが要件) |
(出典=厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 p.17・p.22・p.38、同「令和8年8月3日からの変更点について」p.1・2026年9月24日参照)
共通知識を厚くした研修ほど、除外後に10時間を割りやすい
共通知識の説明を厚く置いた研修ほど、除いたあとで実訓練時間が10時間を割りやすくなります。10時間は、カリキュラムの総時間ではないためです。
対象外の内容の時間、移動時間、食事を伴う休憩は、実訓練時間数から除いて数えます。除外の細かい数え方は、ピラー記事に整理してあります。
形式は、到達点に必要な時間を、除外される時間を引いても10時間以上確保できるかで選びます。
DAIJOBUの研修は、本編を3時間×4回の12時間で組み、対面を基本にしています。回と回の間は1〜2週間空けて、宿題で実務に触る期間を確保しています。
10時間以上の要件は本編の12時間で判断し、環境構築や管理者向けの事前動画の時間を足して説明することはしていません。12時間のうち何時間が実訓練時間に数えられるかも、支給申請後の審査で決まります。
形式まで決まると、最後に助成金を当てます。
要素④助成金|最後に当てる。率と上限は訓練時間と企業規模で変わる
リスキリング研修に当てる助成金は、対象者・到達点・形式が決まったあとに、率と上限で試算します。順番を守れば、助成金はカリキュラムを曲げる力を持ちません。
人材開発支援助成金の事業展開等リスキリング支援コース(厚生労働省「ご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 p.38)の経費助成は、中小企業75%・大企業60%です。賃金助成は1人1時間当たり中小企業1,000円・大企業500円です。
受け取れる経費助成の額には別に上限があり、その額は実訓練時間の区分と企業規模、実施方法で変わります。eラーニング・通信制は経費助成のみで、上限も通学制より低くなります。区分ごとの上限額は事業展開等リスキリング支援コースとは|AI研修で使う条件と流れの表で確認してください。
要件を満たした場合、上限に当たらない範囲であれば、中小企業は経費の4分の1が実質負担の目安と試算できます。ただし、率と上限だけでは実質負担は決まらず、除外後の実訓練時間と支給申請後の審査で変わります。持ち帰りは1つで、率は「要件を満たした場合の上限」として扱い、試算は上限込みで行うことです。
ファクトボックス|この記事で引いた助成制度の基本情報
項目 | 内容 |
|---|---|
制度名 | 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) |
所管 | 厚生労働省。窓口は都道府県労働局 |
助成されるもの | 訓練経費と、訓練期間中の賃金の一部 |
経費助成の割合 | 中小企業75%/大企業60%。1人1訓練当たりの上限は実訓練時間の区分・企業規模・実施方法で変わる |
賃金助成 | 1人1時間当たり 中小企業1,000円/大企業500円。eラーニング・通信制は対象外 |
訓練の要件 | OFF-JTで実訓練時間数が10時間以上。事業展開/DX・GX化/人事・人材育成の計画に基づく職務のいずれかに当てはまること |
受講者の要件 | 申請する事業主の雇用保険被保険者 |
計画届 | 訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に労働局へ提出 |
期間 | 令和4年度〜8年度の期間限定の助成金として創設 |
根拠資料 | 厚生労働省「ご案内(詳細版)」令和8年8月3日版/「令和8年8月3日からの変更点について」 |
出典URL | https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf |
最終確認日 | 2026年9月24日 |
免責 | 支給の可否は支給申請後の審査で決まります。要件は改正で変わるため、最新の内容は管轄の労働局でご確認ください |
助成の実訓練時間に数えられるのは、職務の作業の演習の層だけです。
上段と下段の線は、ここまでの4要素で決まっています。上段はDX研修の側の内容で、下段は研修ではなく業務そのものです。中段だけで10時間以上を組めるかどうかが、リスキリング研修として助成金に乗るかどうかの分かれ目です。
厚生労働省の詳細版は、経営改善の指導のような通常の事業活動として行うものを対象外のOFF-JTに挙げていて、研修の場で本番の成果物を作りにいくと、この扱いになって対象から外れることがあります(詳細版 p.28 表1④・2026年9月24日参照)。
助成金から決めると、中身が制度に寄る
順番を逆にして助成金から決めると、率を最大にする形へカリキュラムが寄ります。対象者を全員に広げ、到達点をぼかし、eラーニングで時間を稼ぐ、という形です。それぞれが、選定の観点・概念理解の観点・回数制限に当たります。
対象者・到達点・形式・助成金の順番を守ると、この3つの崩れ方を避けやすくなります。
助成金は研修を選ぶ理由ではなく、決めた研修の負担を下げる手段です。
国の助成金のほかに、自治体の支援や企業内の制度もあります。会社が先に使うものの順番は、リスキリング支援は何がある?|国・自治体・企業内の3層と会社が先に使うものにまとめています。
対象者の人数と企業規模が決まっている方は、上限込みの実質負担の目安を料金試算(助成金対応)で出せます。
4要素で解けないこと|支給の審査・開発目的・全社員向けの共通知識
リスキリング研修の4要素を埋めても、決まらないことが3つあります。先に書いておきます。
①支給の可否は、労働局の審査で決まる
4要素を制度の要件に合わせて置いても、助成金が支給されるかどうかは支給申請後の審査で決まります。厚生労働省の詳細版は「計画届を提出したことをもって、助成金が確実に支給されるものではありません」と書き、「この訓練を受講すれば必ず助成金が受給できるなどと、厚生労働省や労働局・ハローワークが保証することもありません」とも明記しています(同 p.40・p.55・2026年9月24日参照)。研修会社であるDAIJOBUにも、可否を判定する立場はありません。
②エンジニアだけの組織と、開発サイクルの効率化が目的の研修
この記事の4要素は、経営・営業・採用・バックオフィスなど、非エンジニアの職務を変える研修を前提に書いています。DAIJOBUの研修も同じ前提で、エンジニアだけの組織や、開発サイクルの効率化を目的とする研修は、現時点で提供していません。商談でその目的だと分かったときは、その場で伝えて、開発支援の相談に切り替えています。
③全社員に揃える共通知識は、別の場が要る
対象者を職務で絞ると、受けない社員が出ます。用語や基本操作を全員に揃える場は、リスキリング研修とは別に要ります。社内の勉強会や短い動画で揃える形が組みやすく、助成金の対象にはなりにくい代わりに、かける時間も短くできます。
リスキリング研修に関するよくある質問
Q. リスキリング研修とDX研修の違いを、一言で言うと何ですか
A. リスキリング研修は受講者の職務が変わる(職種が変わるか、作業のやり方が大きく組み替わる)前提で組む研修で、DX研修は職種を問わず全員に共通知識を足す研修です。 テーマが同じ生成AIでも、対象者と到達点の置き方で、どちらの研修になるかが決まります。
Q. 全社員にリスキリング研修を受けさせたいのですが、できますか
A. 全社員を一律に対象にする形は、リスキリング研修としては組みにくい形です。 変える職務の作業を担当している人から対象を選び、全員に揃えたい用語や基本操作は別の短い場で扱う順番をお勧めします。助成金を当てる場合も、訓練内容に沿って受講者を選んでいるかが見られます。
Q. 到達点は研修会社に書いてもらえばいいですか
A. 到達点は、研修会社ではなく受講する会社が、自社の業務から書きます。 研修会社のカリキュラムから写すと、「生成AIを理解する」のようなテーマの書き方に戻るためです。DAIJOBUの研修でも、開講前に受講企業へ研修で扱いたい業務を挙げてもらい、演習の題材をその業務にしています。
Q. 研修の前に到達点が書けません。どうすればいいですか
A. 到達点は、研修で扱いたい業務を3〜5個挙げるところから書けます。 挙げた業務ごとに「{職務}の{作業}を、{AIに任せる範囲}まで任せ、{人が残す確認}を行える」の形に当てはめると1文になります。1文にならない業務は、題材にする前に作業の中身を分けてください。
Q. リスキリング研修と名前が付いていれば、助成金は使えますか
A. リスキリング研修という名前だけで、助成金が使えると決まるわけではありません。 事業展開等リスキリング支援コースでは、訓練の中身・受講者の選び方・実訓練時間数が要件に合っているかが、支給申請後の審査で判定されます。厚生労働省も、受講すれば必ず受給できると保証することはないと明記しています。
Q. リカレント教育とリスキリング研修は、どう違いますか
A. リカレント教育は、今の職務に知識を足す学びも、職務が変わる前提の学びも、教養の学び直しも含む広い言葉です。 文部科学省の資料では、リカレント教育がアップスキリングとリスキリングの双方を含む整理になっています。リスキリング研修は、そのうち会社が社員に対して、今の職務の延長線上では身につかないスキルを身につけさせるものです。
リスキリング研修の要点|総括表
論点 | 押さえるところ |
|---|---|
リスキリング研修とは | 事業の変化に合わせて、社員に新しい職務のスキルを身につけさせる研修。今の職務の延長線上では身につかないスキルが対象 |
DX研修との違い | 受講者の職務が変わるかどうか。DX研修は職種を問わず共通知識を足す |
設計する4要素 | 対象者→到達点→形式→助成金の順に決める |
①対象者 | 変える職務の作業を担当する人。役職や部署で選ばない |
②到達点 | 職務の作業を、AIに任せる範囲まで任せ、人が残す確認を行える、の1文で書く |
③形式 | OFF-JTで、除外後の実訓練時間を10時間以上。実施方法で助成の扱いが変わる |
④助成金 | 最後に当てる。率と上限は訓練時間・企業規模・実施方法で変わり、支給は審査で決まる |
4要素で解けないこと | 支給の可否/エンジニアだけの組織の開発効率化/全社員向けの共通知識の場 |
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まとめ|リスキリング研修はDX研修と何が違い、何で決まるのか
リスキリング研修とDX研修の違いは、受講者の職務が変わる前提があるかどうかにあります。研修の中身は、テーマや研修の名前ではなく、対象者・到達点・形式・助成金をこの順に決めた結果で決まります。
今日と今週でできることを3つ挙げます。
- 今日:変えたい職務を1つ選び、その作業を担当している人の名前を書き出します。これが対象者の名簿の下書きになります
- 今週:その職務の作業を2〜3個挙げ、「{職務}の{作業}を、{AIに任せる範囲}まで任せ、{人が残す確認}を行える」の1文にします。70%の完成度でかまいません
- 今週中:研修の候補が出てきたら、概念説明の時間を除いても実訓練が10時間以上残るかを確かめ、そのあとで実質負担を試算します
最後に、社内で自分に問える1問を置きます。御社のリスキリング研修の名簿に載っている人は、研修のあと、どの作業を新しいやり方で続けますか。 答えが名前と作業で出てこなければ、要素①と要素②に戻ってください。
要点の再掲(保存用)
- リスキリング研修は、受講者の職務が変わる前提で組む研修です
- DX研修との違いは、テーマではなく、受講者の職務が変わるかどうかにあります
- 会社が設計する要素は、対象者・到達点・形式・助成金の4つで、この順に決めます
- 助成金の対象と対象外の線も、特定の職務に直結するかどうかで引かれています
- 支給の可否は支給申請後の審査で決まり、4要素を揃えても保証はされません
対象者の人数と企業規模が決まったら、上限込みの実質負担の目安を料金試算(助成金対応)で確かめられます。
到達点の書き方を自社の業務で確かめてから決めたい場合は初回無料体験講座(無料・30分)を申し込むもご利用ください。
出典・注記
- 経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会」(2021年2月26日)資料2-2「リスキリングとは ―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」(リクルートワークス研究所) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/002_02_02.pdf (2026年9月24日参照)。検討会の委員資料であり、法令上の定義ではありません
- 文部科学省 総合教育政策局生涯学習推進課「大学等がリカレント教育に取り組む意義と推進に向けた方向性」p.2 https://www.mext.go.jp/content/240510-mxt_syogai03-100000261_1.pdf (2026年9月24日参照)。同資料もリカレント教育は「法令で定義が決まっている訳ではない」としています
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタルスキル標準ver.2.0を公開」2026年4月16日 https://www.ipa.go.jp/pressrelease/2026/press20260416.html (2026年9月24日参照)
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf (2026年9月24日参照)。制度の説明 表紙、計画届の期限 p.3・p.41、実施方法の定義 p.11・p.22、訓練の要件 p.13、受講時間8割の要件 p.17、対象とならないOFF-JT p.28、助成率・上限 p.38、支給の非保証 p.40・p.55。ページは印刷ページ
- 厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf (2026年9月24日参照)。対象外の訓練・3つの問い・生成AIとCO₂算定の例・eラーニングの受講回数
- 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」令和8年7月31日公表 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html 、結果の概要 https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf p.17・p.24、用語の説明 https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001727676.pdf p.1・p.2(いずれも2026年9月24日参照)。事業所調査は常用労働者30人以上を雇用する事業所が対象で、日本の事業所全体の代表値ではありません。OFF-JTの実施率は研修の中身を問わない数字で、リスキリング研修の実施率ではありません
- 本記事で「DX研修」と呼んでいるのは、職種を問わず全員に共通知識を揃える研修のことで、本記事での呼び分けです。公的な定義ではありません。4要素と決める順番は、改正リーフレットの3つの問いと実施方法の要件から本記事が組んだ整理で、公的な手順ではありません
- 研修前のヒアリングの内容(1回分・数値と社名は非公開)、開講前に研修で扱いたい業務の準備をお願いしていること、各回の修了条件、本編12時間の構成、開発系の研修を提供していないことは、当社の自社情報です
- 本記事は、いずれの制度についても受給を保証するものではありません。支給の可否は審査で決まり、要件は改正で変わります。実際に使う前に、所管の最新資料と窓口でご確認ください
この記事について
本記事は、法人向けにClaude Codeの研修を提供するDAIJOBUが、リスキリング研修を会社の側で設計する順番を、経済産業省・文部科学省・厚生労働省の一次資料と当社の研修運用に沿って整理したものです。
著者 | DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修部 コンテンツ担当 佐藤 雅俊 |
|---|---|
編集責任者 | DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修 事業責任者 石井 雄大 |
監修 | DAIJOBU株式会社 代表取締役 山中 裕貴 |
公開日 | 2026年9月28日 |
最終更新日 | 2026年9月28日 |