法人向けのAI研修の見積もりを取ったあと、多くの会社が同じ順番で動きます。金額を見て、助成金で下げられないかを調べはじめる

そこで出てくるのが、人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」です。中小企業なら経費の75%が助成されると書かれていて、実質負担が4分の1になる計算が並んでいます。

先に結論を書くと、割合そのものは事実です。ただし2026年8月の改正で、どの訓練が対象になるかの線引きが変わりました。

厚生労働省の改正リーフレットは、生成AIの訓練を対象外の例と対象の例の両方に挙げています。名指しされた対象外は汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練で、対象は営業担当者向けに提案書の作成を学ぶ訓練です。

生成AIを扱う訓練だから対象になる・ならない、という切り分けではなくなりました。分かれ目は内容と受講者の側に移っています。

この記事では、制度の骨格と金額、対象と対象外の分かれ目、申請の期限までを、厚生労働省の一次資料に沿って整理します。

この記事の要点は3つ

  1. 経費助成の割合は中小企業75%・大企業60%。ただし受け取れる助成額そのものに上限があるため、割合だけでは実質負担は決まりません
  2. 2026年8月の改正で、DX化に関する訓練であっても「職務に間接的に必要なもの」「職業人として共通して必要なもの」は対象外になりました。生成AIの訓練が対象例と対象外例の両方で名指しされています
  3. 対象になるかどうかは、研修を選んだ時点では決まりません。どの職務の業務を組み替えるか、誰に受けさせるかで決まります
型A 全体像カード型。事業展開等リスキリング支援コースの骨格を1枚に要約する。要素=①人材開発支援助成金のコースの1つであること ②助成されるのは訓練経費と訓練期間中の賃金 ③経費助成の割合は中小企業75%・大企業60% ④受け取れる助成額には上限がかかる ⑤申請するのは受講する企業。結論=助成されるのは訓練経費と訓練中の賃金で、割合は中小企業75%・大企業60%。ただし受け取れる助成額には上限が別にかかります。

助成されるのは訓練経費と訓練中の賃金で、割合は中小企業75%・大企業60%。ただし受け取れる助成額には上限が別にかかります。

企業規模と人数から実質負担の目安を先に押さえたい方は料金試算(助成金対応)をご利用ください。

料金を試算する(助成金対応) ▶


目次

  1. 事業展開等リスキリング支援コースとは|制度の骨格と、いくら助成されるか
  2. 生成AIを使う訓練は対象になるのか|2026年8月3日の改正で分かれ目が変わった
  3. 対象にならない訓練|どこまでが除外され、残りは何時間必要か
  4. 対象になる事業主・労働者・訓練|申請の前に自社が満たすもの
  5. 申請の流れと期限|計画届は訓練開始の1か月前まで
  6. 社労士に相談する前に、自社で決めておく3つのこと
  7. DAIJOBUの場合|制度の要件に合わせた研修の組み方
  8. 事業展開等リスキリング支援コースのよくある質問
  9. 事業展開等リスキリング支援コースの要点|総括表
  10. あわせて読みたい
  11. まとめ|対象になるかは、研修を選ぶ前に自社側で決まる

事業展開等リスキリング支援コースとは|制度の骨格と、いくら助成されるか

事業展開等リスキリング支援コースは、厚生労働省の人材開発支援助成金に置かれたコースの1つです。事業展開やDX化に伴って新しい知識・技能を習得させる訓練を実施した場合に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部が助成されます

ファクトボックス|人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の基本情報

項目

内容

制度名

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

所管

厚生労働省。窓口は都道府県労働局・ハローワーク

助成されるもの

訓練経費と、訓練期間中の賃金の一部

経費助成の割合

中小企業75%/大企業60%

賃金助成

1人1時間について 中小企業1,000円/大企業500円

訓練時間の下限

実訓練時間数が10時間以上(OFF-JTで実施)

1事業所が1年度に受給できる額

1億円

申請する人

訓練を実施する事業主。つまり受講する企業側

申請窓口

事業所の所在地を管轄する都道府県労働局

根拠資料

厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版

出典URL

https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf

最終確認日

2026年9月8日

免責

支給には審査があります。要件は制度改正で変わるため、最新の内容は管轄の労働局でご確認ください

助成の割合と、賃金助成の額

助成は2種類です。訓練にかかった費用に対する経費助成と、訓練を受けている時間の賃金に対する賃金助成があります。

企業規模

経費助成

賃金助成(1人1時間について)

設備投資加算

中小企業

75%

1,000円

導入費用の50%

大企業

60%

500円

設備投資加算の限度額は、支給対象労働者1人につき15万円、10人以上の場合は人数にかかわらず150万円です。

eラーニングによる訓練、通信制による訓練、定額制サービスによる訓練は経費助成のみで、賃金助成の対象になりません。所定労働時間外や休日に実施した訓練の時間も、賃金助成からは外れます。

受け取れる助成額には上限がある

経費助成には限度額が設けられていて、受講する労働者1人につき1つの訓練で受け取れる助成額の上限は、実訓練時間数の区分で3段階に分かれます。

実訓練時間数

中小企業

大企業

10時間以上100時間未満

30万円

20万円

100時間以上200時間未満

40万円

25万円

200時間以上

50万円

30万円

この上限は「対象になる経費」ではなく「助成額」にかかります。計算した助成額が上限を超える場合、超えた分は戻りません。

割合と上限はセットで見ないと、実質負担の見込みがずれます。

なお、eラーニング・通信制による訓練の場合は、この上限が中小企業15万円・大企業10万円になります。通学制や同時双方向型の訓練と組み合わせて実施した場合も同じ扱いです。定額制サービスによる訓練は、1人につき1か月2万円が経費助成の上限です。

対象になる訓練は3つの類型に分かれる

このコースで助成の対象になるのは、OFF-JTで実施され、次の3つのいずれかに当てはまる訓練です。時間の下限はファクトボックスのとおり10時間です。

類型

厚生労働省の定義

① 事業展開

事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

② DX・GX

企業内のデジタル・デジタルトランスフォーメーション(DX)化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

③ 人事及び人材育成に関する計画

企業内の人事及び人材育成に関する計画に基づき、今後従事することが予定される職務に必要となる専門的な知識及び技能の習得をさせるための訓練

①の「事業展開」は、訓練開始日から3年以内に実施する予定のもの、または6か月前までに実施したものに限られます。③の類型を使う場合は、中小企業であれば認定経営革新等支援機関に計画内容の確認を受ける必要があり、手続きが1段増えます。

生成AIの研修が乗るのは、ほとんどの場合②のDX類型です。 そして2026年8月の改正で最も絞り込まれたのが、この②でした。

このコースは「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました」と厚生労働省の資料に記載されています。令和8年度は2026年度にあたります。

自社の人数と企業規模で実質負担の目安を出すなら料金試算(助成金対応)が使えます。

料金を試算する(助成金対応) ▶


生成AIを使う訓練は対象になるのか|2026年8月3日の改正で分かれ目が変わった

生成AIを扱う訓練が助成の対象になるかどうかは、2026年8月3日を境に判断の仕方が変わりました。厚生労働省が同日付で出した改正リーフレットは、変更点を2つ挙げています。対象とならない訓練の範囲と、受講回数の上限です。

まず対象外の範囲です。DX化・GX化に関する訓練について、次の2つの目的のものが助成対象外と明記されました。

  • 職業、または職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させる内容のもの
  • 職業、または職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの

この2つ自体は以前からの除外項目で、改正の要点はDX・GX化に関する訓練も例外にしないと明示した点にあります。

生成AIの訓練が、対象と対象外の両方で例示されている

改正リーフレットは、生成AIを具体例として使っています。

判定

訓練の例

理由

助成対象

生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練

営業担当者の具体的な業務に直結しており、そのまま活用可能な内容であるため

助成対象外

生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練

特定の業務への具体的適用を伴わない汎用的内容であるため

型B 対比型。左=助成対象外の例「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」。右=助成対象の例「生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練」。中央に分かれ目のラベル「特定の職務にそのまま使えるか」。結論=分かれ目は生成AIかどうかではなく、特定の職務にそのまま使える内容かどうかです。

分かれ目は生成AIかどうかではなく、特定の職務にそのまま使える内容かどうかです。

同じ講師が、同じツールを教えても、カリキュラムの書き方と受講者の職務によって結論が変わります。市販の「生成AI入門」をそのまま持ってくると、対象外の側に落ちる可能性が高くなります。

改正リーフレットが示す3つの問い

リーフレットは、判定の観点を3つの問いとして並べています。

① 特定の職業、または職務に必要となる知識・技能を習得するためのものか

「AIを業務に活かす」という粒度では足りません。どの職務の、どの作業を、どう変えるのかまで書けているかが問われます。営業担当者向けの提案書作成が対象例に挙がっているのは、職務と作業の両方が特定されているからです。

② マナー、リテラシー、概念理解にとどまっていないか

リーフレットは対象外の例として「DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練」を挙げています。理由は、DX化を進める上での共通知識の習得にとどまり、具体的作業として業務に直接適用される内容ではないためです。

研修の冒頭に置かれがちな概論パートは、ここに該当します。入れてはいけないわけではなく、その時間は助成の計算から外れると考えるのが実務的です。

③ 訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか

3つ目がいちばん見落とされます。リーフレットは、CO₂排出量の計算手順を学ぶ訓練を例に、同じ訓練でも受講者によって結論が変わることを示しています。算定業務を担当する者が対象なら業務プロセスに直接組み込まれる実務能力を習得できるため助成対象、人事や営業に従事する者が対象なら助成対象外です。

カリキュラムだけでなく、受講者名簿も審査の対象になっている ということです。全社員に一律で受けさせる形は、この観点で崩れやすくなります。

受講回数にも上限が付いた

もう1つの変更点が受講回数です。助成の対象になる訓練の受講回数は、1人の労働者につき1年度で3回までです。

このうち、改正後に提出された計画届に基づくeラーニングによる訓練は、1人の労働者につき1年度で1回までに制限されました。複数の実施方法を組み合わせて訓練を実施する場合も、この枠を消費します。

ここでいう1年度とは、支給申請日を基準にした4月1日から翌年3月31日までを指します。

経過措置がある。判定するのは契約日

改正には経過措置が置かれています。計画届の提出日が2026年8月3日以降であっても、次に当てはまる場合は改正前(令和8年5月14日に改正された支給要領)が適用されます。

訓練の種類

経過措置が適用される条件

事業外訓練(教育訓練機関に委託する場合)

教育訓練機関との契約の締結または申込が、2026年8月2日以前に行われている場合

事業内訓練(自社が主催する場合)

支給対象経費にかかる契約・申込・発注等のうち、訓練の実施に関連するものがいずれか1つ以上、2026年8月2日以前に行われている場合

いずれも、契約書・申込書・発注書などの日付が分かる書類で確認されます。判定の基準は計画届の日付ではなく、契約の日付です。

助成金の側から研修内容を見直す観点は、AIリスキリング助成金の記事でも扱っています。


対象にならない訓練|どこまでが除外され、残りは何時間必要か

対象にならない訓練は、生成AI関連だけではありません。厚生労働省のパンフレットは、助成対象とならないOFF-JTを実施目的の面から10類型に整理しています。

#

対象にならない実施目的

職業・職務に間接的に必要となる知識・技能

普通自動車運転免許の取得のための講習

職業人として共通して必要となるもの

接遇・マナー講習など社会人としての基礎的なスキル

趣味教養を身につけることを目的とするもの

日常会話程度の語学、話し方教室

通常の事業活動として遂行されるもの

経営改善の指導、自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明、自社製品の説明、QCサークル活動

職業能力開発に直接関連しないもの

講演会、座談会、見学会、ビジネス交流会、オンラインサロン

法令で事業主に実施が義務付けられているもの

労働安全衛生法に基づく特別教育など

職業・職務に関する知識・技能の習得を目的としないもの

意識改革研修、モラール向上研修

役職として求められる知識・技能(③の類型に限る)

管理職研修、マネジメント研修、リーダーシップ研修

資格試験、適性検査

講習を受けずに単独で受験できるもの

認定経営革新等支援機関が実施する訓練(③の類型に限る)

④の「自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明」は、社内でAIツールの操作を教えるだけの研修は通常の事業活動と見なされる、ということです。

自社の題材を使うのは可。成果物を作りにいくと対象外

④には但し書きがあり、線引きが具体的に示されています。単に自社の業務上の情報を訓練の題材として取り上げる場合で、業務改善指導や事業活動における成果物の創出につながらないものは、④に該当しないとされています。ただしこの扱いは事業外訓練(教育訓練機関に委託する場合)に限られます。

パンフレットの例がそのまま判断基準になります。

  • 自社の財務諸表を用いて財務分析の手法を学ぶ訓練は対象
  • その分析結果に基づいて経営改善計画を策定する場合は対象外

演習の題材に自社のデータを使うところまでは問題なく、その場で納品物を作りにいくと線を越えます。研修会社に委託する形でAI研修の演習を設計するときの分岐点になります。

実施方法でも落ちることがある

実施方法の面からも除外があります。よく当たるものを挙げます。

  • 業務上の義務ではなく、労働者が自発的に行うもの
  • 専らビデオのみを視聴して行う講座(eラーニング・通信制を除く)
  • 生産ラインや就労の場で行われるもの。現場実習、営業同行トレーニングなど
  • 訓練指導員免許を有する者、またはその分野の専門的な知識・技能を有する講師により行われないもの
  • 年次有給休暇を与えて受講させる訓練

訓練時間は「除外したあと」で数える

対象外の内容がカリキュラムに含まれていても、研修全体が落ちるわけではありません。ただし、その時間は実訓練時間数から除外して数えます。そして、除外して算定した実訓練時間数が10時間以上必要です。

時間の数え方には、内容以外の除外もあります。

時間

実訓練時間数の扱い

昼食などの食事を伴う休憩時間

含められない(総訓練時間数にも含めない)

移動時間

含められない

小休止(1回30分以下の休憩)

1日について累計60分まで含められる

開講式・閉講式・オリエンテーション

1回の計画届について累計60分まで含められる

予習・復習(宿題、事前学習、確認テスト)

総訓練時間数にも実訓練時間数にも計上しない

型C 帯構造型。上から順に「計画した総訓練時間」→ 除外される層(対象外の内容の時間/移動時間/食事を伴う休憩)→ 残った「実訓練時間数」→ 最下部に「10時間以上」の判定ライン。結論=対象外の時間を除いたあとの実訓練時間数が10時間以上あることが要件です。

対象外の時間を除いたあとの実訓練時間数が10時間以上あることが要件です。

概論パートを厚めに置いた研修ほど、除外後に下限を割るリスクが上がります。 15時間の研修に概念説明と自社ツールの操作説明が6時間分入っていれば、除外後は9時間です。カリキュラムを組む段階で、余白を持たせておく必要があります。

なお、事前学習の動画がLMSなどで進捗管理できるものである場合、その部分はeラーニングによる訓練として扱われます。標準学習時間を訓練時間数に計上したうえで、受講可能期間の初日の1か月前までに計画届を出すことが必要になり、前章のeラーニングの年1回制限も消費します。


対象になる事業主・労働者・訓練|申請の前に自社が満たすもの

助成を受けられる条件は、訓練の中身だけではありません。事業主・労働者・訓練の3方向に要件があり、どれか1つでも欠けると申請そのものが成立しません

事業主の要件は7つ

事業展開等リスキリング支援コースを受給できるのは、次のすべてを満たす事業主です。

#

要件

1

雇用保険適用事業所の事業主であること

2

労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画と職業訓練実施計画届を作成し、内容を労働者に周知していること

3

職業能力開発推進者を選任していること

4

訓練を受けさせる期間中も、賃金を適正に支払っていること

5

審査に必要な書類等を整備し、5年間保存していること

6

労働局の求めに応じて書類を提出し、実地調査に協力すること

7

事業展開等実施計画(様式第1-3号)を作成する事業主であること

2と3は、計画届を出す前に済ませておくものです。 研修の日程だけ先に決めてしまうと、ここで詰まります。

労働者の要件

対象になるのは、次のすべてを満たす労働者です。

  • 申請する事業主の事業所において雇用保険被保険者であり、訓練実施期間中も被保険者であること
  • 計画届のときに提出した「対象労働者一覧」(様式第3-1号)に記載のある被保険者であること
  • 通学制または同時双方向型の通信訓練の場合、受講時間数が実訓練時間数の8割以上であること

役員の扱いを気にする会社は多いのですが、制度が定めているのは雇用保険被保険者であることで、被保険者でなければ対象になりません。

出席の8割要件があるため、欠席が重なった受講者はその人だけ支給対象から外れます。日程を詰めすぎないほうが安全です。

訓練の要件

訓練側の基本要件は3つです。OFF-JTであること、除外後の実訓練時間数が10時間を下回らないこと、3類型のいずれかに当てはまることです。

加えて、パンフレットには次の注記があります。単にデジタル機器を使って文章・数値の入力や書式・レイアウトの変更程度の初歩的な操作を行う内容のみの訓練は対象になりません。また、単に既存のアプリやシステムを購入してその操作方法を習得する場合や、コンサルタントによる指導も対象外です。

「ツールの使い方を教わる」形の研修は、この注記に当たりやすい構造になっています。

人材開発支援助成金には複数のコースがあり、どのコースを使うかで要件も上限も変わります。コース選びの考え方は人材開発支援助成金とAI研修の記事にまとめています。


申請の流れと期限|計画届は訓練開始の1か月前まで

事業展開等リスキリング支援コースの申請は、訓練を始める前から動きます。期限を1日でも過ぎると受け付けられません。全体の流れは次のとおりです。

ステップ

やること

期限

Step0 前提

職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・労働者への周知

計画届の前

Step1 計画提出

職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、事業展開等実施計画(様式第1-3号)、対象労働者一覧、訓練カリキュラム等を管轄労働局へ提出

訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間

Step2 訓練実施

計画に沿って訓練を実施。支給申請までに訓練経費を全額支払う

Step3 支給申請

支給申請書(様式第4-2号)、OFF-JT実施状況報告書、出勤簿・賃金台帳の写し等を提出

訓練終了日の翌日から起算して2か月以内

Step4 審査

支給審査のうえ、支給・不支給が決定される

「審査には時間を要します」と案内されています

型D フロー型。左から Step0 職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画 → Step1 計画届の提出(訓練開始の6か月前から1か月前まで)→ Step2 訓練の実施と経費の全額支払い → Step3 支給申請(訓練終了日の翌日から2か月以内)→ Step4 審査と支給決定。最終ステップだけ青塗り。結論=計画届は訓練開始の1か月前まで、支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。

計画届は訓練開始の1か月前まで、支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内です。

提出期間の数え方には癖がある

月末の扱いには癖があります。パンフレットの例をそのまま引きます。

訓練開始日

提出期間

7月30日

1月30日(6か月前の同日が提出期間の初日、31日ではない)から6月30日まで

3月31日

9月30日(9月31日がないためその前日)から2月28日(2月29日まである場合は、2月29日)まで

提出期限が土日や休日にあたる場合は、翌開庁日が提出期限になります。

出し方でつまずく2点

提出方法は、窓口への直接提出、郵送、電子申請の3つです。ここで実務が止まりやすい点が2つあります。

1つ目は郵送で、到達した日が提出日になります。消印有効ではないため、簡易書留など配達記録が残る方法で余裕をもって送る必要があります。

2つ目は電子申請です。利用にはGビズIDの取得が必要で、さらに計画届を電子申請で行っていない場合、その計画届に係る変更届と支給申請を電子申請で行うことはできません。最初に選んだ方法が最後まで続きます。

計画届を出しても、支給が決まるわけではない

パンフレットには「なお、計画届を提出したことをもって、助成金が確実に支給されるものではありません」と明記されています。審査は訓練実施後の支給申請を受けてから行われます。

助成を前提に予算を組むのではなく、助成が通れば実質負担が下がる、という順番で考えるのが安全です。 訓練経費は支給申請までに全額を支払う必要があるため、資金の流れとしても先払いになります。

厚生労働省は、訓練を実質無料で受けられると謳って本来受けられない助成金を提案する、教育訓練機関やコンサルティング会社の勧誘に注意を呼びかけています。注意例には「AI研修とAIツールの導入をセットで行うことにより、AIツールの導入費用についても研修費用として申請することができる」という営業も挙がっていて、AIツールの導入費用は対象経費ではないとされています。

不正受給を行った場合、事業主は返還を求められるだけでなく、事業主名が原則公表され、5年間助成金を受けられなくなります。


社労士に相談する前に、自社で決めておく3つのこと

申請の実務は社労士に依頼できます。ただし、社労士でも研修会社でも決められない領域が3つあります。

ここを空欄のまま相談に行くと、往復が増えます。逆に埋めてから行けば、要件に合うかどうかの判断がその場で進みます。

① どの職務の、どの業務を組み替えるか

事業展開等実施計画(様式第1-3号)に書くのは、会社として何をどう変えるかです。「AIを活用して生産性を上げる」では通りません。どの部門の、どの作業を、どのように変えるのかを、社内の言葉で書き出しておきます。

改正リーフレットの対象例と同じ「営業担当者の提案書作成」の粒度で、自社の話を書けるかどうかが判定の材料になります。

② 誰に受けさせるか

対象労働者一覧(様式第3-1号)に載せる人を先に決めます。①で挙げた業務を実際に担当する人であることが要ります。研修の枠が余ったから他部署から埋める、という組み方は、改正の3つ目の観点に当たります。

雇用保険被保険者であることと、受講時間が8割以上になる日程で参加できることも、この段階で確認しておくと後戻りしません。

③ どの研修を受けるか

訓練時間そのものは自社で決める項目ではありません。研修会社のカリキュラムで決まります。自社側で決めるのは、どの研修を受けるかです。

候補のカリキュラムを見るときは、概論や自社ツールの操作説明が混ざる分を差し引いても、実訓練時間数が10時間を下回らないかを確認します。下限ぎりぎりのカリキュラムを選ばないことが実務上の要点です。1つのモジュールが対象外と判断されただけで要件を割る構成なら、研修会社に構成の見直しを相談します。

研修会社に確認する質問

3つが埋まったら、研修会社側に確認します。

質問

これで確認できること

このカリキュラムは、どの職務のどの作業に直結する設計になっていますか

対象と対象外の分かれ目

概念説明や自社ツールの操作説明は、何時間分含まれていますか

除外後の実訓練時間数

受講者の職務に合わせてカリキュラムを調整できますか

受講者選定との整合

事前学習の動画はLMSで進捗管理されていますか

eラーニング扱いになるかどうか

申請は誰が行う前提になっていますか

申請主体の確認

型A 全体像カード型。自社で先に決める3つ=①どの職務のどの業務を組み替えるか ②誰に受けさせるか ③どの研修を受けるか(訓練時間は研修会社のカリキュラムで決まる。除外後10時間以上かを確認)。それぞれに対応する提出物として、事業展開等実施計画・対象労働者一覧・訓練カリキュラム(研修会社が出す)を並べる。結論=社労士に渡す前に、職務・受講者・受ける研修の3つを自社側で決めておくと手戻りが減ります。

社労士に渡す前に、職務・受講者・受ける研修の3つを自社側で決めておくと手戻りが減ります。

研修そのものの費用がどう決まるかは、Claude Code研修の費用相場|料金の決まり方・助成金・費用対効果までで扱っています。


DAIJOBUの場合|制度の要件に合わせた研修の組み方

ここまで制度の話として書いてきたので、私たちの立場も明示します。DAIJOBUは法人向けにClaude Codeの研修を提供しており、主力の助成制度として事業展開等リスキリング支援コースをご案内しています

改正で問われるようになったのは、特定の職務の業務にそのまま使える内容かどうかでした。

私たちはエンジニアだけでなく営業・採用・バックオフィスを含む20名以上が日常業務でClaude Codeを使い、業務別のカスタムエージェントを30種以上実装しています。研修で扱うのは、その実際に動いている業務です。

制度に合わせている点を3つ挙げます。

  • 訓練時間——OFF-JTの実訓練時間数10時間以上という要件に対して、本編を12時間で組んでいます
  • カリキュラムの粒度——受講者の職務にひもづく業務を題材にする設計にしています。一般的な使い方の説明だけで完結する構成にはしていません
  • 実質負担の考え方——中小企業の経費助成の割合は75%です。上限に当たらない範囲であれば、実質負担は4分の1が目安になります

そのうえで、正直に書いておくことがあります。助成の対象になるかどうかを、研修会社が保証することはできません。 支給の可否は労働局の審査で決まり、厚生労働省も「この訓練を受講すれば必ず助成金が受給できる」と保証することはないと明記しています。

申請するのは受講する企業側です。私たちができるのは、計画届に添付するカリキュラムを要件に合う形で出すこと、除外される時間を事前に共有すること、社労士や労働局に相談する材料を揃えることまでです。

研修そのものをどう選ぶかは、助成金とは別の軸で決めることをおすすめします。判断軸は生成AI研修の選び方に整理しました。

企業規模と人数を入れて実質負担の目安を出すなら料金試算(助成金対応)をご利用ください。

料金を試算する(助成金対応) ▶


事業展開等リスキリング支援コースのよくある質問

Q. 生成AIの研修は対象になりますか

A. 内容と受講者によります。改正リーフレットは、営業担当者向けの提案書作成の訓練を対象例に、特定の業務に結びつかない一般的な訓練を対象外の例に挙げており、特定の職務の業務に直結しているかが軸です。個別の可否は管轄の労働局にご確認ください。

Q. オンラインで受ける研修は対象ですか

A. 講師と受講者が同時にやり取りする形式は「同時双方向型の通信訓練」として通学制と同じ区分になり、賃金助成の対象にもなります。録画教材を各自で視聴する形式は「eラーニングによる訓練」に区分され、経費助成のみで上限額も別です。

Q. eラーニングだけでも使えますか

A. 使えますが、経費助成のみで上限も別枠になり、改正後の計画届に基づくものは1人の労働者につき1年度で1回までです。詳しくは上限額と改正の章をご覧ください。

Q. 同じ社員は年に何回まで使えますか

A. 1人の労働者につき1年度で3回まで、うちeラーニングは1回までです。年度の数え方は改正の章に書きました。

Q. 役員は対象になりますか

A. 肩書きではなく、雇用保険被保険者かどうかで決まります。詳しくは要件の章をご覧ください。

Q. いつまで使える制度ですか

A. パンフレットに「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設しました」と記載されています。令和8年度は2026年度で、今後の取り扱いは公表される情報でご確認ください。

Q. 助成金はいつ入金されますか

A. 支給申請の後に審査があり、パンフレットには「審査には時間を要します」とあるだけで、具体的な期間は明示されていません。訓練経費は支給申請までに全額を支払うため、先払いになる点を織り込んで資金計画を立ててください。


事業展開等リスキリング支援コースの要点|総括表

論点

押さえるところ

助成の内容

経費助成は中小企業75%・大企業60%。賃金助成は1人1時間について中小企業1,000円・大企業500円。ただし受け取れる助成額に上限がある

対象になる訓練

OFF-JTで実訓練時間数10時間以上。事業展開/DX・GX/人事及び人材育成に関する計画の3類型のいずれか

対象にならない訓練

職務に間接的なもの、職業人として共通のもの、概念理解にとどまるもの。DX化に関する訓練でも例外にならない

受講者

雇用保険被保険者で、対象労働者一覧に記載があり、受講時間が実訓練時間数の8割以上

期限

計画届は訓練開始の6か月前から1か月前まで。支給申請は訓練終了日の翌日から2か月以内

申請主体

訓練を実施する事業主。研修会社ではなく受講する企業が申請する


あわせて読みたい

関連記事生成AI研修の選び方|カリキュラムの前に見る「品質を誰が担保するか」記事を読む ▶


まとめ|対象になるかは、研修を選ぶ前に自社側で決まる

  • 受講者の選び方も判定に入ります。訓練内容と受講者の職務が合っているかを先に確認してください
  • 対象外の内容が混ざっても全部が落ちるわけではありません。除外したあとの時間で10時間を数えます
  • 助成が通るかどうかは審査で決まります。助成を前提に予算を組まず、通れば実質負担が下がるという順番で考えてください

制度の要件を追いかけると細かく見えますが、やることは1つです。どの職務の、どの業務を、誰と一緒に組み替えるのかを先に決める。そこが決まっていれば、様式に書く内容も、研修会社に出す注文も、社労士に渡す材料も同時に埋まります。

企業規模と人数から実質負担の目安を出せる料金試算(助成金対応)を用意しています。

料金を試算する(助成金対応) ▶

研修の中身と進め方をまとめたサービス資料のダウンロードもご利用いただけます。

サービス資料をダウンロードする ▶


出典・注記

  • 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf (2026年9月8日参照)。助成率・限度額・支給要件・対象とならない訓練・手続きの根拠
  • 厚生労働省「令和8年8月3日からの変更点について 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正」 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf (2026年9月8日参照)。生成AIの対象例・対象外例、3つの判定の観点、受講回数の上限の根拠
  • 厚生労働省「事業展開等リスキリング支援コースのご案内」令和8年4月8日版 https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001687619.pdf (2026年9月8日参照)
  • 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html (2026年9月8日参照)
  • 助成率・上限額・要件・期限は制度改正で変わります。本記事の記載は2026年9月8日時点で確認した内容であり、受給を保証するものではありません。個別の可否は管轄の都道府県労働局でご確認ください
  • 本記事に記載していない数値(審査から入金までの期間など)は、一次資料で確認できなかったため掲載していません
  • DAIJOBUの研修設計に関する記述(本編12時間、事業展開等リスキリング支援コースを主力制度として案内していること)は、当社の自社情報です

この記事について

本記事は、法人向けにClaude Codeの研修を提供するDAIJOBUが、厚生労働省の一次資料に沿って事業展開等リスキリング支援コースの要件と手続きを整理したものです。

著者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修部 コンテンツ担当 佐藤 雅俊

編集責任者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修 事業責任者 石井 雄大

監修

DAIJOBU株式会社 代表取締役 山中 裕貴

公開日

2026年9月9日

最終更新日

2026年9月9日