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AIの法規制|AI法の施行で企業の社内ルールと研修に要ること

AIの法規制|AI法の施行で企業の社内ルールと研修に要ること

AI法が全面施行されて社内ルールを直すべきか迷っている会社に向けて先に答えると、日本のAIの法規制の中心であるAI法は、罰則の規定を持たない推進法で、企業にAIの使い方の新しい禁止事項を課す法律ではありません。

ただし、AIの使い方には個人情報保護法や著作権法などの既存の法律がそのまま及び、EU向けに事業をする会社にはEU AI法がかかることもあります。

この記事の要点は3つ

  1. 日本のAI法は、国の施策と事業者の責務を定める推進法で、罰則の規定はありません。活用事業者の責務は、AIの活用に「努める」ことと、国の施策に「協力しなければならない」ことの2つです
  2. 社内ルールで線を引く根拠になるのは、主に個人情報保護法や著作権法など、AIの使い方に及ぶ既存の法律です。EU AI法は、EUで使う場合や、出力がEUで使われる場合に日本の会社にも及ぶことがあります
  3. 社内ルールと研修で決めることは、使い方の棚卸し・社内ルールへの確認点の書き足し・研修での理由の共有の3つの手順に分けられます。3つの分け方は本記事の整理で、国が示した手順ではありません

AIの法規制を、自社の社内ルールと研修の決めごとに置き換えたい方は、研修内容と導入事例を、まとめて確認するからご確認いただけます。

社員がAIを業務で安全に使うための研修を作る側から、法規制の条文を解説するのではなく、法規制を社内ルールと研修の決めごとに置き換える作業に絞って書きます。この記事は法令の判断をしません。個別の事案に法律が当てはまるかの判断や、AIを開発して提供する会社が負う義務の細部が知りたい方には当てはまらないため、弁護士などの専門家に確認してください。

AIの法規制で最初に問われやすいのは、社外へ情報が出る経路の管理です。経路ごとの止め方は生成AIの情報漏洩リスクと対策|漏れる経路は3つしかないで扱っています。

この記事でわかること

  • AIの法規制の全体像と、AIを直接扱う法律と既存の法律の違い
  • 日本のAI法が企業に求めることと、罰則が無いことの意味
  • 生成AIの使い方に及ぶ既存の法律と、国の注意喚起
  • 海外のEU AI法が日本の会社に及ぶ場面と、適用の日付
  • 自社が規制の対象になるかの確かめ方と、社内ルール・研修で決める3つの手順

AIの法規制とは|AIを直接扱う法律・既存の法律・海外の法律の3層

AIの法規制とは、AIの研究開発や活用について定めた法律や国の指針と、AIを使う場面にも及ぶ既存の法律をまとめた呼び方です。会社の社内ルールにつなげるときは、AIを直接扱う法律と、AIの使い方に及ぶ既存の法律を分けて読むと、どこを直せばよいかが見えやすくなります。

日本でAIを直接扱う法律は、2025年に成立した「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」(令和7年法律第53号。以下、AI法。AI推進法とも呼ばれます)です。内閣府の概要資料は、法律が必要な理由として、イノベーションを促しつつリスクに対応するため、既存の刑法や個別の業法などに加えて新たな法律が必要だと書いています。AI法は、既存の法律を置き換えるのではなく、その上に足された法律です。

ファクトボックス|日本のAI法の基本情報

項目

内容

正式名称

人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)

成立・施行

2025年5月28日成立/6月4日公布・一部施行/9月1日全面施行

性格

研究開発と活用を推進する施策の基本を定める法律。罰則の規定はない

事業者の責務

第7条。AIの活用に努めることと、国・地方公共団体の施策に協力すること

法律に基づく指針

人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針(2025年12月19日 人工知能戦略本部決定)

出典URL

https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_act/ai_act.html ほか(末尾の出典・注記に資料ごとに掲載)

参照日

2026年10月22日

免責

本記事は法的な助言ではありません。自社の事案への当てはめは専門家に確認してください

社内ルールが参照する法律は3つの層に分かれる

会社がAIを使うときに関わる法律は、AIを直接扱う日本の法律と指針、AIの使い方に及ぶ既存の法律、海外の法律の3つの層に分けて整理できます。3つの層は本記事の整理で、法律どうしの上下関係を示すものではありません。

1つ目の層のAI法と国の指針は、取り組みの方向と考え方を示すもので、守らなかったことへの罰則はありません。2つ目の層の個人情報保護法や著作権法は、AIのために作られた法律ではありませんが、AIに何を入れ、出てきたものをどう使うかの場面にそのまま及びます。3つ目の層のEU AI法は、日本の会社でも、EUでAIを使う場合や、AIの出力がEUで使われる場合に及ぶことがあります。

型C・帯構造型。会社がAIを使うときに関わる法律を、縦に立てた3本の帯を左右に並べて示す。帯の並びは上下関係を表さないため、帯と帯のあいだに矢印や包含の線は置かない。要素=左の帯「AIを直接扱う日本の法律と指針」=AI法・適正性確保の指針・AI事業者ガイドライン。方向と考え方を示し、罰則の規定はない/中央の帯「AIの使い方に及ぶ既存の法律」=個人情報保護法・著作権法など。入力と出力の扱いに線がある/右の帯「海外の法律」=EU AI法など。EUで使う場合や出力がEUで使われる場合に及ぶことがある。各帯の上端に見出しを置いて下線で区切り、その下に説明を書く。中央の帯を青で強く、左右の帯は淡い青。タイトルは図の上の帯に入れず、黒の見出しと灰色の副題で置き、結論は図の下に置く。大きな番号は置かない。結論=社内ルールで具体的な線を引く根拠になるのは、主にAIの使い方に及ぶ既存の法律です。

社内ルールで具体的な線を引く根拠になるのは、主にAIの使い方に及ぶ既存の法律です。

AIの法規制に合わせて社内ルールを直すときは、AI法の条文よりも先に、自社のAIの使い方に既存の法律がどう及ぶかを確かめます。


日本のAI法規制|AI法は罰則のない推進法で、責務は努めと協力

日本のAI法規制の中心であるAI法は、AIの研究開発と活用を進めるための国の施策の基本を定めた法律です。条文は、総則・基本的施策・人工知能基本計画・人工知能戦略本部の4つの章と附則でできており、罰則の規定はありません。

活用事業者の責務|第7条は「努め」と「協力しなければならない」

AI法の第7条は、AIを使った製品やサービスを開発・提供する者と、AIを事業活動で活用しようとする者を「活用事業者」と呼びます。定義には「人工知能関連技術を事業活動において活用しようとする者」が含まれています。

第7条が活用事業者に求めているのは2つです。1つ目は、自ら積極的にAIを活用して、事業活動の効率化と高度化、新産業の創出に「努める」ことです。2つ目は、国と地方公共団体が実施する施策に「協力しなければならない」ことです。

条文は、AIの使い方を具体的に縛る禁止事項や、社内ルールに書くべき項目を定めていません。社内ルールを見直すきっかけにするなら、AI法の条文そのものより、次の章で扱う既存の法律と自社の使い方を照らすほうが、直す場所を特定しやすくなります。

罰則が無くても、国が見ている場面はある

罰則が無いことは、何をしても国が関わらないという意味ではありません。第16条は、国が国内外の動向の情報を集め、不正な目的や不適切な方法でAIが使われて国民の権利利益が侵害された事案を分析し、その結果に基づいて活用事業者などに指導・助言・情報の提供を行うと定めています。

基本理念を定めた第3条第4項も、AIの研究開発や活用が不正な目的や不適切な方法で行われた場合に、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害などを助長するおそれがあると書いています。AI法自身が、AIの使い方で問題になる場面として、既存の法律が守る権利を挙げています。

適正性確保の指針|全ての主体に求める要素にAIリテラシーがある

AI法の第13条に基づき、2025年12月19日に「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」が人工知能戦略本部で決定されました。指針は、事業者や国民を含む全ての主体の自主的かつ能動的な取り組みを促すために作られたもので、各主体の規模や立場、AIがもたらすリスクに応じて適切な水準で対応することを求めています。

指針が全ての主体に示す要素には、人間中心・安全性・透明性・セキュリティ・プライバシー・個人情報などと並んで、AIリテラシーが入っています。AIリテラシーの項目は、リスクの社会的に受け入れられる水準が変わりうることを認識し、便益の最大化とリスクの抑制を図れるよう、知識・能力を身に付け、倫理観を保持することと書かれています。

指針の項目2「研究開発機関及び活用事業者が特に取り組むべき事項」は、研究開発機関と活用事業者に向けて、教育・研修の実施などを含むAIガバナンスを構築・運用・継続改善することを挙げています。本文はAIを活用した製品やサービスを開発・提供する活用事業者を挙げているため、社内で使う会社にどの事項がどこまで当てはまるかは、原典で確かめます。

国のガイドラインとの関係|社内の体制づくりは別の記事で扱う

AI法とは別に、総務省と経済産業省が「AI事業者ガイドライン」を公表しており、2026年10月22日時点の最新は2026年3月31日公表の第1.2版です。ガイドラインの位置づけと、社内で体制・リスク評価・ルール・監査を決める順番は、AIガバナンスとは?|国のガイドラインの要点と社内で決める順番で扱っています。この記事は、法規制から社内ルールと研修に何を足すかに絞ります。

AI法が会社に直接求めるのは、AIの活用に努めることと国の施策への協力で、社内ルールの禁止項目を定めた法律ではありません。


生成AIの法規制|使い方に及ぶのは個人情報保護法と著作権法

生成AIの法規制で、社員の日々の使い方に直接関わるのは、AI法よりも個人情報保護法や著作権法などの既存の法律です。どちらもAIのために作られた法律ではありませんが、生成AIに何を入れるか、出てきたものをどう使うかの場面に及びます。

入力の場面|個人情報保護委員会の注意喚起

個人情報保護委員会は、2023年6月2日に「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しました。個人情報取扱事業者に向けた注意点は2つです。

1つ目は、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合に、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認することです。2つ目は、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性があるため、サービスの提供事業者が個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認することです。

注意喚起が挙げる確認点は、入れる情報の利用目的と、入力が応答の出力以外に使われないか、たとえば機械学習に使われないかの2つです。2点を満たせば入れてよいという意味ではないため、判断に迷う業務は専門家に確かめます。入力してよい情報の範囲の決め方は、生成AIに機密情報を入れて大丈夫?|学習させない設定と、入力してよい範囲の決め方で扱っています。

出力の場面|著作権と、文化庁の考え方

生成AIで作った文章や画像を社外に出す場面では、著作権が関わります。文化審議会著作権分科会の法制度小委員会は、2024年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめ、文化庁は2024年7月31日に「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表しています。

どの出力が著作権の侵害に当たるかは、個別の事案ごとの判断になり、この記事では扱いません。社内ルールで決めておけるのは、生成したものを社外に出す前に誰が確かめるかと、迷ったときの相談先です。

既存の法律の線は、事故の記録から見えてくる

既存の法律がどこで問題になるかは、条文を読むよりも、実際に起きた事故をたどるほうがつかみやすくなります。社員が機密を入力した例や共有の設定ミスで公開された例を、起きた原因ごとに並べた記事は、AIの情報漏洩事例|起きた原因から学ぶ社内の対策にまとめています。

生成AIの使い方の線は、主に入力では個人情報保護法、出力では著作権法など、既存の法律に照らして引きます。


海外のAI法規制|EU AI法は日本の会社にも及ぶことがある

海外のAIの法規制で、日本の会社が最初に確かめるのはEUのAI法(Regulation (EU) 2024/1689)です。EU AI法は、AIをリスクの大きさで分け、許容できないリスクの使い方の禁止、高リスクのAIへの厳しい義務、透明性の義務を定め、最小リスクのAIには規則を設けていません。ただし第4条のAIリテラシーの規定は、リスクの区分によらず提供者と利用者にかかります。

日本の会社に及ぶ場面|第2条の適用範囲

EU AI法の第2条第1項は、適用の対象として、EUの市場にAIを出す提供者(拠点がEUの外でも対象)、EUに拠点がある利用者、EUの外に拠点がある提供者と利用者のうちAIの出力がEUで使われる場合を挙げています。日本の会社でも、EUの拠点でAIを使う場合や、AIで作ったものをEUで使う場合は、対象に入るかを確かめる必要があります。

日本のAI法と違い、EU AI法には制裁金があります。上限は違反の種類で分かれ、最も重いのは第5条で禁止された使い方への違反です。第99条は、その違反について、最大3,500万ユーロか、前年の全世界の年間売上高の7%のいずれか高いほうを上限としています。中小企業は、いずれか低いほうが上限です。2026年の改正で第99条に第6a項が加わり、SMCと呼ばれる中堅企業も、第4項と第5項に定める制裁金は低いほうが上限になりました。

適用の日付|2026年7月の改正で高リスクの義務が後ろへ動いた

EU AI法は2024年8月1日に発効し、義務は段階的に適用されています。欧州委員会の案内ページ(2026年10月19日更新)によると、禁止とAIリテラシーの規定は2025年2月2日から、汎用AIモデルの義務とガバナンスの規則は2025年8月2日から適用され、法律の全体は一部の例外を除いて2026年8月2日から適用されています。

高リスクのAIの義務は、2026年7月27日に発効した改正(Regulation (EU) 2026/1744。欧州委員会はAI Omnibusと呼んでいます)で後ろへ動きました。採用や教育など附属書IIIの分野は2027年12月2日から、製品に組み込まれる附属書Iの分野は2028年8月2日から適用されます。

型D・フロー型。EU AI法の主な適用の日付を、左から右へ5つの箱で示す。要素=箱「2024年8月1日」=発効→箱「2025年2月2日」=禁止とAIリテラシーの規定→箱「2025年8月2日」=汎用AIモデルの義務→箱「2026年8月2日」=一部の例外を除き全体を適用→箱「2027年12月2日」=附属書IIIの高リスクの義務(2026年の改正で後ろへ移動)。淡青フィールドに白ボックス、青矢印。「2025年2月2日」の箱を青で塗り、最後の箱は白地に青枠。大きな番号は置かない。結論=EU AI法の義務は段階的に適用され、AIを使う側にも関わるAIリテラシーの規定は2025年2月から適用されています。

EU AI法の義務は段階的に適用され、AIを使う側にも関わるAIリテラシーの規定は2025年2月から適用されています。

AIリテラシーの規定|社員の学びを支える措置が求められる

EU AI法の第4条は、AIの提供者と利用者に、自社の社員や、自社に代わってAIを動かし使う人のAIリテラシーについての措置を求める規定です。当初の条文は、できる限り十分な水準のAIリテラシーを確保する措置を求めていました。2026年の改正で、AIリテラシーの向上を支える措置を取ることに書き換えられ、個人ごとに特定の水準を保証することまでは求めないと明記されました。

改正後も、措置を取ること自体は提供者と利用者に残っています。対象に入る会社にとって、社員向けの研修は、この規定に向き合うときの手段の1つになります。

EU AI法や国の指針を、社内ルールと社員向けの研修の決めごとに置き換えたい方は、研修内容と導入事例を、まとめて確認するもご利用ください。

研修内容と導入事例を、まとめて確認する


AIの法規制の対象になるかの確かめ方|3つの問いに答える

AIの法規制の対象になるかは、会社の規模や業種より先に、AIとの関わり方で変わります。法令の判断そのものは専門家に委ねるとしても、次の3つの問いに社内で答えておくと、どの資料を読み、誰に相談すればよいかが絞られます。3つの問いは本記事の整理です。

型A・全体像カード型。自社がAIの法規制の対象になるかを確かめる3つの問いを、横一列に並べ、結論文はタイトルの下に灰色の副題として置く。要素=カード「作るか、使うか」=AIを使った製品やサービスを外に出すか、社内で使うだけか/カード「何を入れ、どこに出すか」=個人情報・他人の著作物・社外秘を入れるか、出力を社外に出すか/カード「EUと関わるか」=EUの拠点で使うか、出力がEUで使われるか。大きな番号は置かない。結論=自社が規制の対象になるかは、会社の規模や業種より先に、AIを作るか使うか、何を入れてどこに出すか、EUと関わるかで絞り込めます。

自社が規制の対象になるかは、会社の規模や業種より先に、AIを作るか使うか、何を入れてどこに出すか、EUと関わるかで絞り込めます。

問い1|AIを作って外に出すのか、社内で使うだけか

1つ目の問いは、AIを使った製品やサービスを開発して社外に提供するのか、他社のAIを社内の業務で使うだけかです。AI法の指針の項目2は研究開発機関と活用事業者に向けた項目で、社内で使う会社にどの事項がどこまで当てはまるかは原典で確かめます。EU AI法も提供者と利用者で義務が分かれます。

社内で使うだけの会社でも、顧客向けのチャットなどAIを使ったサービスを外に出し始めると、提供する側の論点が加わることがあります。使い方が変わったときに、この問いに答え直します。

問い2|何の業務に使い、何を入れて、出力をどこに出すか

2つ目の問いは、業務ごとに、AIに入れる情報と、出てきたものを出す先を書き出すことです。個人情報を入れる業務は個人情報保護法の論点、生成したものを社外に出す業務は著作権の論点に当たります。

金融・医療・採用など、業界によっては所管の省庁の指針や個別の法律が別にあります。業務の一覧に業界の欄を足しておくと、どの資料を法務や専門家に見てもらうかが決めやすくなります。

問い3|EUの拠点や顧客と関わるか

3つ目の問いは、EUの拠点でAIを使うか、AIで作ったものがEUで使われるかです。どちらにも当たらなければ、EU AI法を細かく読む優先度は下がります。どちらかに当たる場合は、EU AI法の対象に入るかを、現地の法務や専門家と確かめます。

3つの問いのうち、社内で答えが出ないものが、法務や専門家に相談する項目になります。


AIの法規制を受けて社内ルールと研修で決める3つの手順

AIの法規制を受けて社内ルールと研修を見直すときは、使い方の棚卸し、社内ルールへの確認点の書き足し、研修での理由と確かめ方の共有の3つの手順で進めます。3つの手順は、AI法・国の指針・既存の法律の要点を、社内の作業に置き換えた本記事の整理です。

型D・フロー型。法規制を受けて社内ルールと研修を見直す手順を、左から右へ3つの箱で示す。要素=箱「1. 使い方を棚卸しする」=業務ごとに入れる情報と出す先を書き、確かめる人を決める→箱「2. 社内ルールに確認点を書き足す」=入力・出力・見直しのきっかけの確認点を足し、設定で止められるものは設定に置く→箱「3. 研修で理由と確かめ方を伝える」=なぜその線か、迷ったときに誰に聞くかを教える。淡青フィールドに白ボックス、青矢印。「3. 研修で理由と確かめ方を伝える」の箱を青で塗る。結論=法規制への対応は、使い方の棚卸しから始め、社内ルールに確認点を書き足し、研修で線の理由と確かめ方を伝える順に進めます。

法規制への対応は、使い方の棚卸しから始め、社内ルールに確認点を書き足し、研修で線の理由と確かめ方を伝える順に進めます。

手順1|使い方を棚卸しし、法律ごとに確かめる人を決める

1つ目の手順は、前の章の問い2で書き出した業務の一覧に、関わる法律と、確かめる人の欄を足すことです。個人情報を入れる業務は個人情報の担当、社外に出す文面や画像を作る業務は法務か広報、EUと関わる業務は海外の取引を見ている担当、というように、法律ごとに確かめる人を置きます。

棚卸しで分けるのは、社内で答えが出る業務と、専門家に聞く業務です。先に分けておくと、法務や専門家への相談の数を絞れます。

手順2|社内ルールに、法令の確認点と見直しのきっかけを書き足す

2つ目の手順は、今ある社内ルールに、法令から来る確認点を書き足すことです。足す場所は、入力・出力・見直しの3か所にまとめられます。

  • 入力:個人情報を入れる前に、利用目的の範囲内かと、使うサービスが入力を機械学習に使わない設定かを確かめる
  • 出力:生成した文章や画像を社外に出す前に、誰が確かめ、迷ったら誰に聞くかを書く
  • 見直し:AI法に基づく指針や国のガイドライン、EU AI法の改正を、社内ルールを見直すきっかけに加える

決めた確認点のうち、使うサービスの設定で止められるものは、文書ではなく設定に置きます。社内ルールの文書の組み立て方とサンプルは、生成AI社内ルールのサンプル|禁止事項リストにしない4層のガイドラインで扱っています。

手順3|研修で、線の理由と迷ったときの確かめ方を伝える

3つ目の手順は、研修で、社内ルールの線がなぜそこにあるのかと、迷ったときの確かめ方を社員に伝えることです。AI法の指針はAIリテラシーを全ての主体に求める要素に挙げ、EU AI法も対象の会社に社員のAIリテラシーを支える措置を求めています。どちらも、ルールの文書を配るだけでなく、社員が理由を分かって使える状態を求める方向です。

ただし、研修だけで法令への対応が終わるわけではありません。当社のセキュリティ設計支援の資料は、研修との違いとして「教育で防げるのは、教育を受けた人が覚えている範囲まで」と書き、仕組みで封じられる部分は仕組みで封じる考え方をとっています。この記述は当社の支援の考え方を示すもので、研修の効果を測った数字ではありません。

そのため研修では、条文を覚えさせるよりも、入れてよい情報の見分け方、社外に出す前に確かめること、迷ったときに聞く相手の3つを、自社の業務の言葉で伝えます。

型B・対比型。法規制への対応を研修だけで受ける状態と、研修と設定・相談先で受ける状態を左右に並べる。要素=左「研修だけで受ける」=受講した人が覚えている範囲までしか守れない/新しい機能や法令の改正で内容が古くなる/迷っても聞く先が決まっていない。右「研修と設定・相談先で受ける」=止められる線は設定に置く/社内ルールに相談先と見直しのきっかけを書く/研修では線の理由と確かめ方を教える。右(推す側)を青で強く、左は淡いグレー。中央に区切りのラベルは置かない。大きな番号は置かない。結論=研修で防げるのは受講した人が覚えている範囲までなので、止められる線は設定に置き、研修では線の理由と迷ったときの確かめ方を教えます。

研修で防げるのは受講した人が覚えている範囲までなので、止められる線は設定に置き、研修では線の理由と迷ったときの確かめ方を教えます。

AIの法規制への対応で研修が受け持つのは、社内ルールの線の理由と、迷ったときに誰に確かめるかを、社員が自分の業務の言葉で言える状態を作ることです。


AIの法規制で、この記事で解けないこと|法令の判断と業界ごとの規制

AIの法規制について、この記事は法令の判断をしません。法規制を社内ルールと研修の作業に置き換える側から書いているため、次の3つは扱いの外に置いています。

個別の事案に法律が当てはまるかの判断

ある入力が個人情報保護法に違反するか、ある出力が著作権の侵害に当たるかは、事案ごとの事実で決まります。本記事が示すのは、社内でどの問いに答え、どこから専門家に相談するかまでです。判断が要る事案は、弁護士などの専門家に確認してください。

業界ごとの規制と、AIを開発・提供する側の義務

金融・医療・採用など、所管の省庁の指針や個別の法律がある業界の規制は扱いません。AIを開発して提供する会社が負う義務、たとえばEU AI法の高リスクのAIの提供者の義務の細部も、本記事の範囲の外です。

改正と更新の速さ

AIの法規制は動きが速く、EU AI法は2026年に高リスクの義務の日付が改正され、国の指針やガイドラインも更新を重ねる方針です。本記事の日付と内容は2026年10月22日時点で確かめたもので、自社の決めごとに使う前に、内閣府・総務省・経済産業省・欧州委員会の掲載ページで最新の版を確かめてください。


AIの法規制に関するよくある質問

Q. AI法に違反すると、罰則はありますか

A. AI法には罰則の規定がありません。 活用事業者の責務は、AIの活用に努めることと、国・地方公共団体の施策に協力することです。ただし、個人情報保護法などの既存の法律は、AIの使い方にもそのまま及びます。

Q. AI法の施行を受けて、社内ルールを作り直す必要はありますか

A. AI法の条文には、社内ルールに書くべき禁止項目は定められていません。 見直すなら、今の社内ルールに、入力・出力・見直しのきっかけの3か所で法令の確認点を書き足す形が進めやすくなります。

Q. EUと取引が無い会社も、EU AI法を気にする必要がありますか

A. EU AI法が日本の会社に及ぶのは、主にEUでAIを使う場合や、EU向けにAIを使った製品やサービスを出す場合、AIの出力がEUで使われる場合です。 どちらにも当たらなければ、細かく読む優先度は下がります。当たるかが分からない場合は、EUの拠点や顧客との取引を担当する部署と確かめます。

Q. AIの法規制に合わせて、社員研修は必要ですか

A. 日本のAI法は、社員研修の実施を企業に義務づけてはいません。 ただし、AI法に基づく指針はAIリテラシーを全ての主体に求める要素に挙げ、EU AI法も対象の会社に社員のAIリテラシーを支える措置を求めています。社内ルールの線の理由を社員が言えるようにする手段として、研修を位置づけます。


AIの法規制と社内の対応|総括表

法律・資料

会社に及ぶ場面

社内ルールと研修で決めること

AI法(2025年9月1日全面施行)

AIを事業活動で活用する活用事業者

新たな禁止事項は無い。指針の改定を見直しのきっかけに加える

適正性確保の指針(2025年12月19日決定)

全ての主体。項目2は研究開発機関と活用事業者向け

AIリテラシーを社員に持たせる方法を決める

個人情報保護法と委員会の注意喚起

個人情報を生成AIに入れるとき

利用目的と、入力が出力以外に使われないかを確かめる

著作権法と文化庁の考え方

生成したものを社外に出すとき

出す前に確かめる人と、相談先を決める

EU AI法(2024年8月1日発効)

EUで使う、または出力がEUで使われるとき

対象に入るかを確かめ、社員のAIリテラシーを支える措置をとる

表の並べ方と「社内ルールと研修で決めること」の列は、本記事の整理です。法律が会社に求める義務の一覧ではありません。



まとめ|AIの法規制で企業に要ることは何か

AIの法規制で企業に要ることは、AI法の条文に合わせることより、自社のAIの使い方に既存の法律とEU AI法がどう及ぶかを確かめ、社内ルールと研修に落とすことです。日本のAI法は罰則のない推進法なので、使い方の線は主に個人情報保護法や著作権法などに照らして引き、研修では線の理由と確かめ方を伝えます。

法規制を受けて社内ルールを見直すなら、次の3つから始められます。

  1. 今日:AIを使っている業務を書き出し、個人情報を入れる業務と、出力を社外に出す業務に印をつける
  2. 今週中:印をつけた業務ごとに、確かめる人と、社内で答えが出ないときの相談先を決める
  3. 今月中:社内ルールに入力・出力・見直しのきっかけの確認点を書き足し、研修で理由と一緒に伝える

完璧な一覧を作ってから動く必要はありません。印をつけた業務から順に、確かめる人を決めていけば十分です。

最後に、社内で自分に問える1問を置きます。御社で生成AIに個人情報を入れている業務について、その情報を集めたときの利用目的と、使っているサービスが入力を学習に使うかを、担当者がすぐに答えられますか。

  • 日本のAI法は、国の施策と事業者の責務を定める推進法で、罰則の規定はありません。活用事業者の責務は、AIの活用に「努める」ことと、国の施策に「協力しなければならない」ことの2つです
  • 社内ルールで線を引く根拠になるのは、主に個人情報保護法や著作権法など、AIの使い方に及ぶ既存の法律です。EU AI法は、EUで使う場合や、出力がEUで使われる場合に日本の会社にも及ぶことがあります
  • 社内ルールと研修で決めることは、使い方の棚卸し・社内ルールへの確認点の書き足し・研修での理由の共有の3つの手順に分けられます。3つの分け方は本記事の整理で、国が示した手順ではありません

AIの法規制を、自社の社内ルールと研修の決めごとに置き換えるなら、研修内容と導入事例を、まとめて確認するからご確認いただけます。

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出典・注記


この記事について

本記事は、法人向けにClaude Codeの研修を提供するDAIJOBUが、日本のAI法と国の指針、生成AIの使い方に及ぶ既存の法律、EU AI法の要点を、内閣府・個人情報保護委員会・文化庁・欧州委員会などの公表資料に沿って整理し、社内ルールと研修の作業に置き換えたものです。

著者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修部 コンテンツ担当 佐藤 雅俊

編集責任者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修 事業責任者 石井 雄大

監修

DAIJOBU株式会社 代表取締役 山中 裕貴

公開日

2026年10月30日

最終更新日

2026年10月30日

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