「学習に使われないなら、何を入れても大丈夫」——これは違います。

学習利用の有無は、確認すべきことの一つにすぎません。契約で外部提供が禁じられている資料は、学習に使われなくても入れられません。 逆に、社内で共有済みの資料なら、そこまで神経質になる必要もありません(法人契約で入力が学習に使われない前提での話です。後段で説明します)。
つまり「入れていいか」は、サービス側の設定と、自社側の契約・情報の性質という、別々の2つで決まります。 ここが混ざったまま議論すると、いつまでも結論が出ません。
入力範囲を決めたあとに何をするかは、生成AI 社内導入を定着させる方法にまとめています。
この記事では、現場から実際に出てくる問いを1つずつ潰していきます。私たちDAIJOBUは営業・採用・バックオフィスを含む20名以上が毎日Claude Codeを使っている会社で、入力の可否を個人の判断に任せず、設定側で決めている側から書きます。
この記事の要点は3つ
- 「入れていいか」はサービス側の設定と自社側の契約・情報の性質の2つで決まる。混ぜて議論すると結論が出ない
- 機密かどうかの二択をやめ、「渡してよい/加工すれば渡せる/渡さない」の3分類を設定ファイルに書く。真ん中があるから現場が止まらない
- 現場が判断するのは「個々の資料がどの分類か」だけ。NDA案件・個人情報は会社・法務が決めて、決まった状態で渡す
入力してよい範囲を、個人の判断ではなく設定側で決めたい方へ。3分類の線引きと役割分担の組み方は、サービス資料(無料・PDF)にまとめています。
目次
- 問い1|生成AIに入力したデータは、学習に使われるのか
- 問い2|どこからが「機密情報」なのか——二択をやめて3分類にする
- 問い3|顧客名が入った資料は、生成AIに入力してダメか
- 問い4|NDA・秘密保持契約の案件資料は、生成AIに入力できるか
- 問い5|個人情報は生成AIに入力してよいか
- 生成AIの入力ルールは誰が決めるのか|現場に判断させない設計
- 「厳しくしすぎると、誰も使わなくなるのでは」|生成AIルールで緩めるのは曖昧さ
- 生成AIと機密情報の総括表|5つの問い×よくある誤解×現場に渡す形
- まとめ|生成AIに機密情報を入れてよいかは3分類と役割分担で決める
問い1|生成AIに入力したデータは、学習に使われるのか
まずここから。生成AIに入力したデータが学習に使われるかは、サービスと契約形態によって扱いが違います。
一般に、法人向けの契約では入力データを学習に使わない設定が用意されていることが多く、無料プランや個人向けプランとは扱いが異なる場合があります。ただし、これはサービスごとに違い、方針も改定されます。 この記事で「◯◯なら安全です」と書いても、読んだ時点で古くなっている可能性があります。
【ファクトボックス】入力した内容は学習に使われるのか——Claude(Anthropic)の例
商用製品(Claude for Work、Anthropic API、Claude Gov など)の既定では、入力・出力をモデルの学習には使わない。
例外として、高評価・低評価などのフィードバックを利用者が自分で送った場合、または利用者が同意した場合は、その会話やコーディングセッションが学習に使われることがある。フィードバックは保護された環境で最大5年間保管され、学習に使う前に利用者・顧客のIDと切り離される。
出典:Anthropic「Is my data used for model training?」 https://privacy.claude.com/en/articles/7996868-is-my-data-used-for-model-training
2026年8月27日参照。個人向けプラン(Free/Pro/Max)は扱いが異なり、規約も改定されます。自社の契約でどうなっているかは、最新の規約と管理画面でご確認ください。
学習利用の確認ポイントは3点|学習・保存期間・管理者設定
確認すること | どこで確認するか | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
入力データが学習に使われるか | 使うサービスの公式ドキュメント・利用規約 | プランによって違う。 自社が契約しているプランで確認する |
データがどこに保存され、いつまで残るか | 同上(データ保持ポリシー) | 「学習に使われない」と「保存されない」は別の話 |
管理者側で設定を統一できるか | 管理コンソールの有無 | 個人が各自で設定する形だと、設定漏れが出る |
2行目がよく混同されます。 「学習には使いません」と書いてあっても、一定期間データが保持される設計であることは普通にあります。学習利用と保存期間は別々に確認してください。
学習利用を確認できる前提|会社として使うサービスを決めていること
ここが本題です。上の3点を確認できるのは、「会社として使うサービスを決めている」場合だけです。
現場が個人契約で好きなサービスを使っている状態では、何を確認すればいいのかすら特定できません。中小企業の64.9%が「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている」と答えています(商工中金・2026年1月調査・n=3,892)。この状態では、学習利用の確認は事実上できません。
つまり問い1への答えは、「まず、会社として使うサービスを決めてください」から始まります。決めたうえで社内に何を書き残すかは、生成AI社内ガイドラインの作り方にまとめています。
問い2|どこからが「機密情報」なのか——二択をやめて3分類にする

「どこからが機密情報か」は、現場がいちばん困るところです。「機密情報を入力しない」と言われても、目の前の資料が機密に当たるかの判断が人によって割れます。
私たちは、機密かどうかの二択で考えるのをやめました。代わりに3分類にしています。
分類 | 中身の例 | 判断の目安 | 該当しない例 |
|---|---|---|---|
渡してよい | 公開情報/社内で共有済みの資料/自分が作った下書き | 契約で保護された利用範囲で渡して差し支えない | まだ発表していない企画・価格 |
加工すれば渡せる | 顧客名・取引先名が入った資料/数値が入った社内データ | 固有名詞を伏せれば意味が通る | 伏せると意味が消えるもの |
渡さない | 個人情報そのもの/認証情報・鍵/契約で持ち出しが禁じられているもの | 加工しても意味が残ってしまう | — |
二択だと、判断に迷った資料はすべて「機密かもしれない」に寄り、結局使えなくなります。
そして、この3分類を文書ではなく設定ファイルに書きます。 Claude Codeには、AIが必ず読む設定ファイルを置く仕組みがあります。ここに線引きを書いておけば、現場が文書を覚えていなくても効きます。線引きが無いまま使われた場合に何が起きるかは、生成AIの情報漏洩リスクと対策で経路ごとに整理しています。
二択をやめると、現場が止まらなくなります。 3分類には真ん中の「加工すれば渡せる」がある——この真ん中があるから、判断が止まりません。
関連記事生成AIの情報漏洩リスクと対策|漏れる経路は3つしかない記事を読む ▶
問い3|顧客名が入った資料は、生成AIに入力してダメか
「顧客の名前が入っているだけでもダメか」は、実務でいちばん多い質問です。答えは「加工すれば使えることが多い」です。
考え方はシンプルで、AIに読ませたいのは中身であって、誰の話かではない、という点です。
固有名詞マスキングの実務|置き換え・切り出し・数値の丸め
- 固有名詞を記号に置き換える……私たちの運用では、「A社」「担当者B」に置き換えても、要約や整理の精度は落ちていません
- 必要な部分だけを切り出す……資料を丸ごと渡さず、処理したい範囲だけコピーする
- 数値の桁や規模感だけ残す……正確な金額が不要な作業なら、丸めた数値で足ります
やってはいけないのは、「面倒だから丸ごと貼る」です。DBの中身をそのまま貼り付ける、顧客名簿をまるごと読ませる——これが典型的な事故の形です。
AIに読ませたいのは「中身」であって、「誰の話か」ではありません。 固有名詞を伏せても、要約・整理・比較の精度はほとんど落ちません。
加工しても渡せない場合|特定できる情報・伏せると業務にならない資料
正直に書くと、加工しても意味が残ってしまうものはあります。
- その情報自体が誰の話か特定できてしまうもの(規模・業種・時期の組み合わせで特定できる、など)
- 加工すると業務にならないもの(宛名を伏せたら送付作業ができない、など)
この場合は「渡さない」に分類し、AIを使わない工程として残します。 すべての業務をAIに載せる必要はありません。
問い4|NDA・秘密保持契約の案件資料は、生成AIに入力できるか
NDA・契約で制約がある案件の資料は、他の問いと性質が違います。自社の判断で線を引ける範囲を超えます。
秘密保持契約や業務委託契約で、第三者サービスへのデータ提供が明示的に禁じられている場合があります。この場合、社内ルールより契約が優先します。
そして重要なのは、「マスクすれば大丈夫」が通用しないことがある点です。契約文言によっては、加工の有無を問わず外部サービスへの投入自体が禁止されているためです。「個人が特定できないようにしたから問題ない」という自己判断は、ここでは危険です。
NDA案件の実務対応|契約条項の確認と案件単位の可否決め
- 契約書の該当条項を確認する(第三者提供・再委託・データの取扱いの条項)
- 判断がつかない場合は、法務または顧客に確認する——自己判断で進めない
- 案件単位で「AI利用可/不可」を先に決めておく……作業のたびに考えると、忙しいときに崩れます
3番目が実務的です。資料ごとではなく案件ごとに札を立てておくと、現場が迷いません。
なお、契約の解釈は個別性が高い領域です。この記事の内容は一般的な整理であり、実際の判断は契約書の文言と、必要に応じて法務・弁護士への確認にもとづいて行ってください。
問い5|個人情報は生成AIに入力してよいか
個人情報は、原則「渡さない」に分類します。
個人情報の取扱いには法令上の定めがあり、第三者提供にあたるかどうかの判断は、利用目的や委託の形態によって変わります。 この記事で「こうすれば大丈夫」と断定できる領域ではありません。
実務上の置き方としては、こうしています。
- 個人情報そのものは、渡さないに分類する(氏名・連絡先・その他の識別できる情報)
- 統計的に処理した結果や、個人を特定できない形にしたものは、別途検討する
- 判断に迷ったら、必ず社内の管理部門または専門家に確認する——現場で決めない
「現場で決めない」と明記しておくことが、実質的な安全装置になります。判断できない問いを現場に押し付けると、忙しいときに都合よく解釈されるからです。
生成AIの入力ルールは誰が決めるのか|現場に判断させない設計
生成AIへの入力可否をめぐる5つの問い(学習利用・機密の線引き・顧客名・NDA・個人情報)に共通するのは、現場が判断できる形にしておくという点です。裏返すと、現場に判断"させて"はいけないということでもあります。
判断の種類 | 誰が決めるか | 現場に渡す形 |
|---|---|---|
使うサービスと契約形態 | 会社(情シス・管理部門) | 「これを使う」と決まった状態で渡す |
情報の3分類 | 会社 | 設定ファイルに書いて配る |
個々の資料がどの分類か | 現場(ただし基準は会社が渡す) | 3分類の基準+迷ったときの相談先 |
NDA案件のAI利用可否 | 法務・案件責任者 | 案件ごとに札を立てておく |
個人情報の扱い | 管理部門・専門家 | 「渡さない」と決まった状態で渡す |
現場が担うのは3行目だけです。 他は会社側で決めて、決まった状態で渡します。
ここを曖昧にしたまま「各自で適切に判断してください」とすると、判断できない人は使わなくなり、判断が甘い人は事故を起こします。 どちらも会社にとって損です。
現場が判断するのは「目の前の資料は、3分類のどれに当たるか」だけです。 迷ったら渡さない側に倒して、相談先に聞く——現場に「判断させる」のではなく、「判断できる形」で渡します。
「厳しくしすぎると、誰も使わなくなるのでは」|生成AIルールで緩めるのは曖昧さ

「入力ルールを厳しくしすぎると、誰も使わなくなるのでは」——生成AIの導入を進める側から必ず出る懸念です。そのとおりで、これは実際に起きます。
ただし、使われなくなる原因は「厳しさ」ではありません。判断できないことです。
- 範囲が明確で厳しいルール → 現場は範囲内で使う。厳しくても止まらない
- 範囲が曖昧なルール → 現場は判断できず、安全側に倒れて使わなくなる(または自己判断で使う)
だから、緩めるべきなのは厳しさではなく曖昧さです。「機密情報は入力しない」を「渡してよいのはこれ、加工すればこれ、渡さないのはこれ」に変える——同じ厳しさでも、後者は現場が動けます。
もう一つ付け加えると、禁止の範囲を広げすぎると、見えないところで使われます。 現場は仕事を終わらせようとするので、締切の前ではルールより業務が勝ちます。この構造は「生成AI禁止」が一番危ないで詳しく書きました。
この記事を書くにあたって、当社でも聞いてみました。「社外に出していいか、判断に迷った資料はあったか」——3分類を運用していれば、境界線上で迷った例がいくつか出てくるだろうと思っての質問です。
返ってきた代表の答えは、予想と違いました。「元々ルールで決めているので、基本迷わない。個人情報や金額などの機密情報は、元々出さないルールにしている」——迷った例を聞いたのに、迷っていないという答えです。
なお当社の線引きでは金額は「渡さない」側に置いています。先に書いた「丸めれば渡せる」は一般的な選択肢で、どこに線を引くかは会社ごとに決めるもの——その線が先にあるかどうかが本題です。
拍子抜けしましたが、考えてみればこれが線引きを先に決めることの到達点です。3分類の目的は「迷ったときに正しく判断できること」だと思われがちですが、実際の効き方は少し違います。ルールが先にあると、迷う場面がそもそも発生しなくなります。 資料を前に「これは出していいのか」と立ち止まる時間自体が消える——判断が速くなるのではなく、判断が要らなくなる、という状態です。
だから順序が大事です。迷う場面に遭遇してからルールを考えるのではなく、迷う前に決めておく。 曖昧さを消すというのは、こういうことだと考えています。
関連記事「生成AI禁止」が一番危ない|シャドーAIが生まれる構造と、禁止を解除する順番記事を読む ▶
生成AIと機密情報の総括表|5つの問い×よくある誤解×現場に渡す形
この記事の骨格を、一枚の表に整理します。
問い | よくある誤解 | この記事の答え | 現場に渡す形 |
|---|---|---|---|
問い1|学習に使われるのか | 「学習に使われないなら、何を入れても大丈夫」 | 学習利用は確認事項の一つにすぎない。学習に使われるか/保存期間/管理者側で統一できるかを分けて見る | 会社として使うサービスと契約形態を決めてから、自社が契約しているプランで確認する |
問い2|どこからが機密情報か | 機密かどうかの二択で決める | 二択をやめて「渡してよい/加工すれば渡せる/渡さない」の3分類にする。真ん中があるから判断が止まらない | 3分類を文書ではなく設定ファイルに書いて配る |
問い3|顧客名が入った資料 | 顧客名が入っていたら一律ダメ | 加工すれば使えることが多い(置き換え・切り出し・数値の丸め)。特定できてしまうもの・伏せると業務にならないものは「渡さない」 | 丸ごと貼らない。処理したい範囲だけを切り出して渡す |
問い4|NDA・秘密保持契約の案件資料 | マスクすれば大丈夫 | 社内ルールより契約が優先する。契約文言によっては、加工の有無を問わず外部サービスへの投入自体が禁止 | 資料ごとではなく案件ごとに「AI利用可/不可」の札を立てておく |
問い5|個人情報 | 個人が特定できなければよい | 原則「渡さない」に分類する。第三者提供にあたるかどうかは利用目的や委託の形態で変わる | 現場で決めない。管理部門または専門家に確認する |
※契約解釈・個人情報の取扱いは個別性が高い領域です。実際の判断は契約書の文言と、法務・専門家への確認にもとづいて行ってください。
まとめ|生成AIに機密情報を入れてよいかは3分類と役割分担で決める
- 「入れていいか」はサービス側の設定と自社側の契約・情報の性質の2つで決まる。混ぜて議論すると結論が出ない
- 学習利用の確認は3点——学習に使われるか/保存期間/管理者側で統一できるか。「学習に使わない」と「保存されない」は別
- そもそも確認できるのは、会社として使うサービスを決めている場合だけ
- 機密かどうかの二択をやめ、「渡してよい/加工すれば渡せる/渡さない」の3分類にする。真ん中があるから現場が止まらない
- NDA案件は自社判断の範囲外。マスクすれば大丈夫、が通用しないことがある
- 現場が判断するのは「個々の資料がどの分類か」だけ。他は会社が決めて、決まった状態で渡す
- 使われなくなる原因は厳しさではなく曖昧さ
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出典・参考
- 商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」(2026年3月31日公表・n=3,892)https://www.shokochukin.co.jp/report/data/assets/pdf/futai202603.pdf ※「会社での導入はなく、使用は個人の判断に任せている64.9%」は同調査による
- Anthropic「Claude Code Overview」https://code.claude.com/docs/en/overview ※設定ファイルの仕組みに関する記載は同ドキュメントによる
- Anthropic「Is my data used for model training?」https://privacy.claude.com/en/articles/7996868-is-my-data-used-for-model-training ※商用製品の入力・出力の学習利用に関する記載は同ドキュメントによる(2026年8月27日参照)
※本記事は2026年8月27日時点の一般的な整理です。学習利用・データ保持の扱いはサービスと契約形態により異なり、方針も改定されます。必ず利用するサービスの公式情報をご確認ください。 また、契約解釈・個人情報の取扱いは個別性が高いため、実際の判断は契約書の文言および法務・専門家への確認にもとづいて行ってください。本記事は法的助言ではありません。
この記事について
DAIJOBUは、営業・採用・バックオフィスを含む20名以上がClaude Codeを日常業務で毎日使い、業務別のエージェント30種以上を実運用している会社です。本記事の3分類は、自社で実際に運用している線引きを、社外秘の部分を除いて整理したものです。
著者 | DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修部 コンテンツ担当 佐藤 雅俊 |
編集責任者 | DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修 事業責任者 石井 雄大 |
監修 | DAIJOBU株式会社 代表取締役 山中 裕貴 |
公開日 | 2026年9月3日 |
最終更新日 | 2026年9月3日 |