「AI議事録で情報漏洩は起きませんか」。会議の文字起こしを自動化しようとすると、必ずこの質問が出ます。

答えから書きます。起きます。ただしAI議事録の情報漏洩は、ツールの性能ではなく、会社が決めていない3か所に集まります

この順番を取り違えると、対策が空振りします。「セキュリティ認証を取っているツールを選ぶ」から入っても、会議の音声がどの契約で・どこに・いつまで残るのかを誰も決めていなければ、認証の有無は関係なく漏れます。

DAIJOBUは、ソフトウェアテスト・品質保証とセキュリティ診断を本業としながら、自社の全業務でAIを日常運用している会社です。商談の準備、商談後のフォローメールの下書き、1on1の記録整理では、AI議事録が作った記録をそのまま後工程で使っています。使っている側として言えるのは、危ないのは録ることではなく、録ったあとの置き場所だということです。

この記事の要点は3つ

  1. AI議事録で情報漏洩が起きる場所は3つに分かれます。会議の音声と文字起こしが誰の契約でどこに残るのかという「録音データの保存先」、オンにする場所が2か所ある「学習利用の設定」、そして記録を外へ出す出口である「共有リンクの扱い」です
  2. 対策には強さの差があります。仕組みで不可能にする対策と、注意を促すだけの対策を同じ「対策済み」として数えると、実際に守られている範囲を見誤ります。従業員への教育・啓発は必要ですが、統制としては数えません
  3. 決めるのはツールではなく線引きです。全面禁止と全面許可のあいだには、設計できる選択肢がたくさんあります。この記事の最後に、会社として決める6項目をそのまま埋められる形で置いています
型A・全体像カード型。AI議事録の情報漏洩が起きる3つの場所を並べる。要素=①録音データの保存先=誰の契約で、どこに、いつまで残るか。個人アカウント・保存期間・保存される国②学習利用の設定=オンになる場所が2か所ある。会議プラットフォーム側とAI議事録ツール側③共有リンクの扱い=出口。リンクを知っている全員・自動配布・連携先・退職者。3枚のカードを横に並べ、下部に「どれもツールの性能ではなく、会社が決める項目」の帯を置く。結論=AI議事録の情報漏洩は、保存先・学習設定・共有リンクの3か所で起きます。

AI議事録の情報漏洩は、保存先・学習設定・共有リンクの3か所で起きます。

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なお、この記事の「3つの穴」と、あとで出てくる「対策の4つの強さ」はDAIJOBUがセキュリティ設計の実務で使っている整理であり、外部の標準や公的な分類ではありません。また、法令の適用は個別の契約と運用によって変わるため、本記事は法的な助言ではありません。最終的な判断は自社の法務・情報システム部門と行ってください。

この記事でわかること

  • AI議事録の情報漏洩が「ツールが安全かどうか」では決まらない理由
  • 対策を強さで4つに分ける見方と、教育・啓発を統制に数えてはいけない理由
  • 会議の音声が「録る・書き起こす・要約する・保存する」のどこで外に出るか
  • 録音データの保存先について、契約前に確認する4項目
  • クラウドサービスの利用が個人情報保護法の「委託」に当たるかの判断基準
  • 学習利用の設定が2階建てになっていることと、どちらの階を先に押さえるか
  • 共有リンクという出口が、実際には4つに分かれていること
  • AI議事録の社内ルールで決める6項目と、そのまま埋められる判断表
  • この記事の対策でも消せない、残るリスクとその書き残し方

目次

  1. AI議事録の情報漏洩は「ツールが安全か」では決まらない|対策の強さは4段に分かれる
  2. 穴1|録音データの保存先|誰の契約で、どこに、いつまで残るか
  3. 穴2|学習利用の設定|オンになる場所は2か所ある
  4. 穴3|共有リンクの扱い|出口はリンクだけではない
  5. AI議事録の社内ルールで決める6項目|そのまま埋められる判断表
  6. AI議事録の情報漏洩で、それでも残るリスク|この記事で解けないこと
  7. AI議事録の情報漏洩に関するよくある質問
  8. AI議事録の情報漏洩対策|総括表
  9. あわせて読みたい
  10. まとめ|AI議事録の情報漏洩は、決めていない場所で起きる

AI議事録の情報漏洩は「ツールが安全か」では決まらない|対策の強さは4段に分かれる

AI議事録の情報漏洩を検索すると、行き着く先はだいたい2つです。安全なツールを選ぶこと。そして従業員に研修をすること。 どちらも間違いではありませんが、この2つだけを並べると、守られている範囲が見えなくなります。

理由は単純で、対策には強さの差があるからです。 私たちはセキュリティ設計の実務で、対策を4つの強さに分けて扱っています。

型C・帯構造型。対策の強さを4段の帯で上から並べる。要素=①強制=仕組み上そもそも不可能。設定で封じられているので、使う人が間違えても破れない(鍵のかかった扉)②抑止=縛るが迂回経路はある。事故の確率を下げる(立入禁止のロープ)③検知=防がないが、破られたら見つけられる・追える(防犯カメラ)④教育・啓発=従う保証がない(貼り紙)。①②の帯だけ青の濃淡で塗り、右側に「機械の層で効く」、③④の右側に「人と組織の層」。④の帯には淡青のチップで「統制としては数えない」。結論=教育・啓発は必要ですが、最終防衛線には置きません。

教育・啓発は必要ですが、最終防衛線には置きません。

この4分類をAI議事録に当てると、世の中でよく挙がる対策がどこに入るかが見えます。

よく挙がる対策

強さ

破れ方

管理者が使えるツールを1つに絞り、それ以外を端末に入れられなくする

強制

設定を配れるプランを契約していないと成立しない

会議ごとに録音するかを利用者が判断する

抑止

忙しい日に判断が飛ぶ

誰がいつ何を閲覧したかのログを残す

検知

起きたことは分かるが、起きるのは止められない

「機密の会議では使わないように」と周知する

教育・啓発

覚えている範囲までしか効かない

「強制」が使えるのは、端末と設定という機械の層だけです。 運用ルールと人の層に強制は存在しません。だから私たちは「セキュリティを担保します」という言い方をしていません。教育で防げるのは、教育を受けた人が覚えている範囲までだからです。

ここが、この記事の出発点になります。AI議事録の記事の多くが対策として挙げる「従業員への周知」は、いちばん下の段にあります。周知をやめる必要はありませんが、周知を数に入れたまま「4つ対策した」と数えると、実際に強制されているのは0個、という状態が普通に起きます。

では、どこを強制に寄せるのか

強制に寄せられる項目を探すと、AI議事録では3か所に集まります。録音データの保存先、学習利用の設定、共有リンクの扱いです。

この3つが選ばれる理由は、どれも設定として書けるからです。逆に「どの会議で使ってよいか」は設定で書けないので、運用ルールとして決めるしかありません。決める場所と強制する場所を分けて考えると、手が付けやすくなります。

なお、生成AI全般でどこから情報が漏れるかという経路の話は、生成AIの情報漏洩リスクと対策|漏れる経路は3つしかないに整理しています。この記事はその中の「AI議事録という1つのツールの中では、どこに集まるか」を扱います。

エージェント型のAIまで含めた全体の設計は、Claude Code セキュリティの考え方と、事故を防ぐ4層の設計にまとめました。


穴1|録音データの保存先|誰の契約で、どこに、いつまで残るか

AI議事録の情報漏洩でいちばん大きいのが、録音データの保存先です。ここが大きい理由は、会議の音声が、その場で消えずに残り続けるからです。

AI議事録の処理は4つの工程に分かれます。録る、書き起こす、要約する、保存する。このうち外に出る余地が生まれるのは、最後の「保存する」です。

型D・フロー型。AI議事録の4工程と、外に出る場所。要素=①録る=会議の音声を取得する②書き起こす=音声をテキストに変換する③要約する=決定事項と宿題を抽出する④保存する=音声・全文・要約がサービス側に残る。④のステップだけ青く塗り、他は白地に青枠。④の下に淡青のチップで「残るのはここ。ここから先が共有と連携に繋がる」。結論=会議の音声が外に出る余地が生まれるのは、保存の工程です。

会議の音声が外に出る余地が生まれるのは、保存の工程です。

録る工程と書き起こす工程だけを見て「文字にするだけだから大丈夫」と考えると、残っているものを数え落とします。要約だけでなく、文字起こしの全文と、元の音声そのものが残る設計があります。 会議で口にした一言が、テキストと音声の2つの形で保管されている状態です。

個人アカウントのまま使うと、会社の管理下から外れる

保存先の問題がいちばん深刻な形で出るのが、個人が自分で契約したアカウントのまま業務の会議に使っているケースです。

私たちが法人のセキュリティ設計を支援するとき、着手前によく見つかるのがこの状態です。本人に悪気はなく、むしろ仕事を早くしたくて入れています。ところが会社から見ると、会議の音声が、会社が一度も内容を確認していない利用規約の下に置かれていることになります。

  • 保存期間を会社が決められない——サービス側の既定に従う
  • 誰がアクセスできるかを会社が把握できない——本人のアカウントの中にある
  • 退職時に回収できない——会社の資産として管理していない

この形は生成AI全般で起きるもので、その構造と解除の順番は「生成AI禁止」が一番危ない|シャドーAIが生まれる構造に整理しています。AI議事録で固有なのは、残るものが「入力したテキスト」ではなく「会議の音声そのもの」だという点です。 発言者の声、言い淀み、雑談まで含めて記録されます。

契約が「委託」に当たるかは、確認しないと分からない

保存先を考えるときに、もう1つ見ておく論点があります。会議に個人情報が含まれる場合、そのクラウドサービスの利用が個人情報保護法上の「委託」に当たるかどうかです。

個人情報保護委員会は、クラウドサービスの利用が第三者提供や委託に当たるかの判断基準を公表しています。判断は「クラウドに保存したかどうか」ではなく、そのサービス提供事業者が個人データを取り扱うかどうかで決まります。

ファクトボックス|クラウドサービスの利用と個人情報保護法

項目

内容

判断の基準

クラウドサービス提供事業者が、その個人データを取り扱うかどうか

「取り扱わない」と言える条件

「契約条項によって当該外部事業者がサーバに保存された個人データを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合等」(Q7-53)

提供に当たらない場合の義務

法第25条に基づく委託先の監督義務は課されない。ただし「自ら果たすべき安全管理措置の一環として、適切な安全管理措置を講じる必要があります」(Q7-54)

出典URL

https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-53/ / https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-54/

最終確認日

2026年9月15日

免責

個別の契約・運用でどちらに当たるかは変わります。本記事は法的助言ではありません。自社の契約書と利用規約を、法務部門とあわせてご確認ください

ここで押さえておきたいのは、条件が2つそろって初めて成立するという点です。契約条項に書いてあるだけでは足りず、適切なアクセス制御もセットで要ります。

そしてもう1つ。AI議事録ツールは、音声を文字に変換し、内容を読んで要約するサービスです。「保存するだけで中身は取り扱わない」という形とは、性質が違います。 自社が使うサービスがどちらに当たるかは、規約と契約書を読まないと決まりません。読まずに「クラウドだから大丈夫」と扱うのが、いちばん危ない状態です。

契約前に確認する4項目

保存先について、契約前か、すでに使っているなら今日のうちに確認できることを4つに絞りました。

確認すること

どこを見るか

見落としやすい点

音声と全文はどこに保存されるか

利用規約・データ保護に関するページ

要約だけを消しても、音声と全文が残る設計がある

いつまで保存され、削除できるか

同上(データ保持ポリシー)

「削除」が画面から見えなくなるだけの場合がある

管理者が利用状況と権限を把握できるか

管理コンソールの有無・プラン表

個人向けのプランだと、管理画面そのものが無いことがある

契約上、事業者が内容を取り扱うか

契約書・規約の該当条項

「取り扱わない」と書いてあっても、アクセス制御とセットで確認する

4つとも、その場の判断ではなく会社として一度決めれば済む項目です。決めたあとは、使えるツールを管理者側で絞る形にすると、強制の段まで上げられます。


穴2|学習利用の設定|オンになる場所は2か所ある

AI議事録の情報漏洩でいちばん誤解が多いのが、学習利用の設定です。誤解の中身は1つで、設定する場所が1か所だと思われていることです。

実際には2階建てになっています。会議をする場所と、議事録を作る場所が別のサービスだからです。

どのサービスの設定か

そこで決まること

1階

会議をするプラットフォーム

録画・録音・自動文字起こしを許すか。外部のアプリが会議に入ることを許すか

2階

AI議事録ツール

入力した音声とテキストを、サービスの改善や学習に使わせるか

片方だけをオフにしても、もう片方は動いています。 AI議事録ツール側で学習利用をオフにしても、会議プラットフォーム側で外部アプリの参加を無制限にしていれば、会社が把握していないツールが会議に入ってくる余地は残ります。

「学習に使わない」と「保存されない」は別の話

もう1つ、階の内側で混ざりやすい点があります。学習利用をオフにしても、データが消えるわけではありません。

  • 学習に使わない——入力したものが、AIモデルの改善に使われない
  • 保存されない——入力したものが、サービス側に残らない

この2つは別々に決まります。「学習には使いません」と明記しているサービスでも、一定期間データを保持する設計は普通にあります。穴1の保存期間の確認と、この穴2の学習利用の確認は、どちらもやる必要があります。

生成AIサービス全般で、学習させない設定が実際にどこにあるかは、生成AIに機密情報を入れて大丈夫?|学習させない設定と、入力してよい範囲の決め方に契約別でまとめています。ここではAI議事録に固有の「2階建て」の部分だけを扱います。

無料プランから入ると、設定できる項目そのものが少ない

AI議事録は、無料で試せるサービスが多い領域です。そして無料プランでは、学習利用の設定や管理者側の統制が、そもそも用意されていないことがあります。

これが厄介なのは、試用と本番の境目が無いからです。1人が無料プランで試し、便利だったのでそのまま定例会議に使い続ける。この流れを止める仕組みは、ツール側にはありません。

試用の期間と、試用に使ってよい会議を先に決めてください。 「試すのは社内の定例まで。顧客が入る会議には使わない」という1行があるだけで、本番へのなし崩しが止まります。

どちらの階を先に押さえるか

順番を聞かれたら、1階(会議プラットフォーム側)が先です。 理由は2つあります。

  1. 会議プラットフォームは、すでに会社として契約していることが多い——今日から管理者が設定できる
  2. 外部アプリの参加を絞れば、まだ選定していないAI議事録ツールにも同時に効く——1つずつ塞ぐ必要がなくなる

2階は、使うAI議事録ツールを会社として1つ決めてからでないと押さえられません。決まる前にできることが1階にある、というのがここでの答えです。


穴3|共有リンクの扱い|出口はリンクだけではない

AI議事録の情報漏洩で、いちばん気づかれにくいのが共有リンクの扱いです。穴1と穴2が「入れたものがどこに残るか」の話なのに対し、ここは「残ったものがどこへ出ていくか」の話になります。

出口は1つではありません。実務で見ると4つに分かれます。

出口

どう漏れるか

押さえ方

リンク共有

「リンクを知っている全員が閲覧可」で発行し、そのまま転送される

既定を社内限定にし、リンク発行の権限を絞る

自動配布

会議の終了と同時に、参加者や特定の宛先へ自動送信される

自動送信の宛先を確認し、社外参加者への扱いを決める

連携先

チャットやタスク管理と連携し、そちらにも記録が複製される

連携を追加できる人を絞り、既定は読み取り専用にする

退職者・異動者

アカウントが残ったまま、過去の記録を閲覧できる

退職・異動の手続きにアカウント停止を入れる

4つのうち、気づかないまま出ていくのが自動配布です。 リンク共有は、少なくとも誰かが共有ボタンを押しています。自動配布は押していないのに出ていきます。 社外の人が入った会議で、社内向けの要約がそのまま全参加者に届く形は、設定を一度も見ていない状態で起きます。

社外の人が入る会議は、告知を先に決めておく

出口の話とあわせて決めておくのが、社外の参加者がいる会議での扱いです。

やることは3つあります。

  1. 会議の招待、または開始時に、AI議事録を使うことを伝える
  2. 断られたときの代わりの手段を、あらかじめ用意しておく
  3. 相手の会社の規程で録音が禁じられている場合があるので、その場で押し切らない

2番目が抜けると、現場は気まずさを避けるために黙って使う方向に流れます。「使いますが、ご希望であれば止めて手元のメモに切り替えます」という一言を型として配っておくと、断られても会議が止まりません。

出口を塞ぐと、穴1と穴2の効き目が変わる

この章を最後に置いているのは、出口が開いたままだと、保存先と学習設定をどれだけ固めても意味が薄れるからです。

学習に使われない契約で、保存期間も短くして、それでもリンクが社外へ転送されていれば、会議の中身は外にあります。3つの穴は独立していません。いちばん弱いところで決まります。


AI議事録の社内ルールで決める6項目|そのまま埋められる判断表

AI議事録の社内ルールが決まらない会社には、共通点があります。技術が足りないのではなく、「どこまで許すか」を決める作業が、誰にも割り当てられていないことです。

私たちが法人のセキュリティ設計を支援するときも、最大の山場はここです。設定の知識ではなく、線をどこに引くかを決める会議が必要になります。そして決まらないまま時間が経つと、現場は個人の判断で使い始めます。

型B・対比型。AI議事録のルールを決めていない会社と、決めた会社を左右で比べる。左=決めていない会社「機密の会議では使わないように」という周知だけがある。誰が使っているか分からない・保存先が人によって違う・共有リンクが外へ出ても気づけない。右=決めた会社 使うツールが1つに決まっている・会議の種類ごとに使ってよい範囲が決まっている・リンクの既定が社内限定・退職時にアカウントを止める手順がある。右側だけ青を強く置く。結論=決まっていない会社では、現場が個人の判断で使い始めます。

決まっていない会社では、現場が個人の判断で使い始めます。

ここで言いたいのは「だから禁止しましょう」ではありません。全面禁止と全面許可のあいだには、設計できる選択肢がたくさんあります。 決める作業を1回やれば、そのあとは設定として配れます。

決める6項目

そのまま社内の議題に載せられる形で6つに絞りました。1回の会議で埋まる量にしてあります。

決めること

決め方の目安

決めないと起きること

使うツールを何にするか

会社として1つに決め、管理者が配れるプランを選ぶ

人によって保存先が違い、全体像が誰にも見えない

どの会議で使ってよいか

会議の種類で線を引く(社内定例は可/人事・法務・未公表の経営情報は不可 など)

判断がその場の空気で決まり、機密の会議でも使われる

社外の人が入る会議での扱い

告知の文言と、断られたときの代わりの手段を先に用意する

気まずさを避けて黙って使う方向に流れる

音声と全文をいつまで残すか

業務で必要な期間から決め、サービスの既定をそのまま使わない

何年も前の会議の音声が残り続ける

共有リンクの既定をどうするか

既定を社内限定にし、外部共有は申請制にする

転送された先で、誰が見ているか分からなくなる

退職・異動のときに何をするか

既存の退職手続きにアカウント停止を1行足す

アカウントが残り、過去の記録を閲覧できる

6項目のうち、上の2つが決まれば残りは埋まります。 使うツールと、使ってよい会議の範囲。この2つが決まっていないまま細部を議論すると、いつまでも終わりません。

決めたら、決めっぱなしにしない

決めた内容は、置き場所を分けると効きます。決めることと、強制することと、教えることは、別の作業だからです。

作業

どこでやるか

決める

運用ルール(どの会議で使ってよいか・何日残すか)

強制する

設定(使えるツールを絞る・リンクの既定を社内限定にする)

教える

人(なぜその線なのかを説明する)

土台にする

端末とアカウント(既存の端末管理とID基盤をそのまま効かせる)

1つのテーマは、複数の場所にまたがって初めて完成します。「どの会議で使ってよいか」を決めただけで終わると、いちばん弱い教育・啓発の段に置いたままになります。 決めた線のうち、設定で書ける部分は設定へ降ろしてください。

全社の生成AIガイドラインとしてどう書き残すかは、生成AI社内ガイドラインの作り方|禁止事項リストにしないための4層構造に整理しています。AI議事録はその中の1項目として収まります。

この6項目を決めたうえで、社内でAIを使える状態にするところまでの費用を見たい方は、料金を試算する(助成金対応)からご確認ください。

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先に社内で共有する材料が要る場合はClaude Code法人導入の検討資料(無料・PDF)をダウンロードするをご覧ください。

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AI議事録の情報漏洩で、それでも残るリスク|この記事で解けないこと

ここまでの対策を全部やっても、AI議事録の情報漏洩の可能性がゼロになるわけではありません。正直に書きます。 利用する側の設定では消せないものが残ります。

残るリスク

なぜ消せないか

再検討する条件(トリガー)

サービス提供事業者側での事故

利用者側の設定の外で起きる

委託先の事故報告・規約の改定通知が来たとき

文字起こしの誤りが記録として残る

精度の問題であり、権限設定では解けない

誤った記録が社外へ出た事例が1件でも出たとき

録音そのものを断られる場面

相手の会社の規程はこちらで変えられない

取引先の規程変更が知らされたとき

会議の中身を軽く扱う習慣がつくこと

仕組みではなく文化の問題

記録を読まずに決めた案件が続いたとき

表の3列目を空欄にしないでください。残るリスクを書き出すときは、「どうなったら見直すか」まで一緒に書き残すのが実務の型です。条件を書いておかないと、書き出したリスク一覧は読まれないまま古くなります。

「録らない」という選択肢を消さない

最後に1つだけ。すべての会議でAI議事録を使う必要はありません。

処遇や評価を扱う面談、未公表の経営情報を扱う会議、係争になりうる相手との協議。この3つは、便利さより記録が残ることの重さが勝ちます。録らない判断ができる状態を残しておくこと自体が、対策の1つです。

「全部の会議で使う」と決めた瞬間に、上の3つも自動的に対象に入ります。既定を「使う」にするなら、除外する会議を同時に決めてください。


AI議事録の情報漏洩に関するよくある質問

Q. AI議事録で情報漏洩する可能性はありますか

A. あります。 ただし起きる場所は限られていて、録音データの保存先、学習利用の設定、共有リンクの扱いの3か所に集まります。3つとも、ツールの性能ではなく会社が決める項目です。「漏れるかどうか」で考えるより、「この3か所が自社ではどうなっているか」を確かめるほうが先に進みます。

Q. AI議事録は安全ですか

A. 安全かどうかは、ツール単体では決まりません。 同じツールでも、個人契約のまま使うのと、管理者が設定を配って使うのとでは、守られている範囲がまったく違います。見るのは製品名ではなく、保存期間を会社が決められるか、共有リンクの既定が社内限定か、管理者が利用状況を把握できるかの3点です。

Q. 無料のAI議事録ツールを、業務の会議に使ってよいですか

A. 試用の範囲と期間を決めてから使ってください。 無料プランでは、学習利用の設定や管理者側の統制がそもそも用意されていないことがあります。試すこと自体は問題ありませんが、試用と本番の境目が無いまま定例会議に定着すると、あとから戻すほうが大変になります。「試すのは社内の定例まで」という1行を先に置くのが安全側です。

Q. 社外の人が入る会議で、AI議事録を使ってよいですか

A. 使う前に伝えてください。 会議の招待か開始時にAI議事録を使うことを告知し、断られたときに切り替える手段を用意しておきます。相手の会社の規程で録音が禁じられていることもあるので、その場で押し切らないでください。断られても会議が止まらないように、告知の文言を型として配っておくのが実務的です。

Q. 学習に使われない設定にすれば、機密の会議でも使えますか

A. それだけでは足りません。 学習に使われないことと、データが保存されないことは別の話です。学習利用をオフにしても、一定期間データが保持される設計は普通にあります。加えて、共有リンクという出口が開いていれば、学習の設定とは無関係に中身が外へ出ます。機密の会議については、使わないという選択肢を残しておくほうが確実です。

Q. 社内ルールを作れば、AI議事録の情報漏洩は防げますか

A. ルールを作るだけでは、いちばん弱い段に置いたままになります。 対策には強さの差があり、教育・啓発は従う保証がありません。決めた線のうち、使えるツールを絞る・共有リンクの既定を社内限定にする・退職時にアカウントを止めるといった項目は、設定と手続きに降ろしてください。ルールは必要ですが、最終防衛線には置きません。

Q. 何から手を付ければいいですか

A. 会議プラットフォーム側の設定からです。 すでに会社として契約していることが多く、管理者が今日から触れます。外部アプリの参加を絞れば、まだ選んでいないAI議事録ツールにも同時に効きます。そのうえで、使うツールを1つ決め、どの会議で使ってよいかの線を引く。この順番なら、ツールの選定が終わる前でも前に進みます。


AI議事録の情報漏洩対策|総括表

論点

押さえるところ

どこで起きるか

録音データの保存先・学習利用の設定・共有リンクの扱いの3か所。ツールの性能ではなく会社が決める項目

対策の強さ

強制・抑止・検知・教育・啓発の4段。強制が使えるのは端末と設定という機械の層だけ

教育・啓発の扱い

必要だが統制としては数えない。教育で防げるのは、教育を受けた人が覚えている範囲まで

穴1の中身

音声・文字起こしの全文・要約が残る。要約を消しても音声と全文が残る設計がある

穴1の最悪形

個人契約のまま業務の会議に使う状態。保存期間も権限も会社が決められず、退職時に回収できない

法令の確認

クラウドの利用が委託に当たるかは、事業者が個人データを取り扱うかで決まる。契約条項とアクセス制御の2つで判断する

穴2の中身

設定は2階建て。会議プラットフォーム側と、AI議事録ツール側の両方にある

穴2の誤解

「学習に使わない」と「保存されない」は別。無料プランでは設定項目そのものが無いことがある

穴3の中身

出口は4つ。リンク共有・自動配布・連携先・退職者。いちばん事故になるのは自動配布

決める6項目

使うツール/使ってよい会議/社外参加者の扱い/保存期間/共有リンクの既定/退職と異動の手続き

置き場所の分け方

決める=運用ルール、強制する=設定、教える=人、土台=端末とアカウント

残るリスク

事業者側の事故・文字起こしの誤り・録音を断られる場面・記録を軽く扱う習慣。見直す条件を一緒に書き残す

最初の一手

会議プラットフォーム側で外部アプリの参加を絞る。ツール選定の前にできる


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まとめ|AI議事録の情報漏洩は、決めていない場所で起きる

  • 起きる場所は3つに分かれる。録音データの保存先、学習利用の設定、共有リンクの扱い。どれもツールの性能ではなく、会社が決める項目で、決まっていない状態が続くほど現場は個人の判断で使い始める
  • 対策は強さで見る。強制・抑止・検知・教育・啓発の4段があり、強制が使えるのは端末と設定という機械の層だけ。教育・啓発を数に入れると、実際に守られている範囲を見誤る
  • 穴1で残るのは音声そのもの。要約と文字起こしの全文に加えて、元の音声が保管される。個人契約のまま使うと、保存期間も権限も会社の管理下に無い
  • 穴2の設定は2階建て。会議プラットフォーム側とAI議事録ツール側の両方にあり、片方だけを切っても、もう片方は動いている。「学習に使わない」と「保存されない」も別の話
  • 穴3の出口は4つある。リンク共有・自動配布・連携先・退職者。押していないのに出ていく自動配布がいちばん事故になりやすい
  • 決めるのは6項目で足りる。使うツール、使ってよい会議、社外参加者の扱い、保存期間、共有リンクの既定、退職と異動の手続き。上の2つが決まれば残りは埋まる

最後に、今日できる一手を1つだけ挙げます。会議プラットフォーム側の設定を開いて、外部アプリの参加がどうなっているかを見てください。 ツールを選ぶ前でも、契約を変える前でも、ここは触れます。そして多くの会社で、ここは一度も見られていません。入口を1つ絞るだけで、まだ選んでいないツールにも同時に効きます。

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出典・注記

  • 個人情報保護委員会「よくある質問」Q7-53 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-53/ (2026年9月15日参照)。クラウドサービスの利用が個人データの第三者提供・委託に当たるかの判断基準、および「契約条項によって当該外部事業者がサーバに保存された個人データを取り扱わない旨が定められており、適切にアクセス制御を行っている場合等」という条件の記述の根拠です
  • 個人情報保護委員会「よくある質問」Q7-54 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q7-54/ (2026年9月15日参照)。法第27条の「提供」に該当しない場合に法第25条の監督義務は課されないこと、および利用する事業者が自ら果たすべき安全管理措置の一環として適切な安全管理措置を講じる必要があることの根拠です
  • 本記事は法的助言ではありません。 個別の契約・運用でどちらに当たるかは変わります。自社の契約書と利用規約は、法務部門とあわせてご確認ください
  • 「3つの穴」(録音データの保存先・学習利用の設定・共有リンクの扱い)は、DAIJOBUがセキュリティ設計の実務で使っている整理であり、業界の標準的な分類ではありません。 公的機関やベンダーが定めた分類を引いたものではなく、自社のどこが決まっていないかを特定するための道具として提示しています
  • 「対策の4つの強さ」(強制・抑止・検知・教育・啓発)と、「決める=運用ルール/強制する=設定/教える=人/土台=端末とアカウント」の分け方も、DAIJOBUの整理です。 外部の標準や公的な分類ではありません
  • 「決める6項目」も、DAIJOBUが法人のセキュリティ設計で使っている型です。 法令や規格が定めた項目ではないため、自社の規程の構成に合わせて並べ替えてください
  • 自社の全業務でAIを日常運用しており、商談準備・フォローメールの下書き・1on1の記録整理でAI議事録が作った記録を後工程で使っている件、および法人のセキュリティ設計支援で「どこまで許すかを決める作業が誰にも割り当てられていない」状態が最大の山場になる件は、当社が自社運用と支援の現場で把握している自社情報です。個々の企業名・製品名・契約条件は記載していません
  • 特定のAI議事録ツールの比較・推奨は本記事では行っていません。 サービスの仕様・プラン・既定値は改定されます。本記事の記述は仕組みの形を説明したもので、自社が使うサービスの実際の挙動は、規約と管理画面でご確認ください
  • 本記事は、ここに挙げた対策で情報漏洩が起きなくなると述べるものではありません。対策は事故の確率を下げ、起きたときの範囲を小さくする手段です
  • 導入の費用・助成金の適用については本記事では扱っていません。費用の考え方はClaude Code研修の費用相場をご覧ください

この記事について

DAIJOBUは、ソフトウェアテスト・品質保証と脆弱性診断を本業としながら、営業・採用・バックオフィスまで含めて自社の全業務でAIを日常運用している会社です。攻撃する側がどこを狙うかという知見を、法人のセキュリティ設計に反映しています。本記事は、AI議事録を使っている側として見てきた「決まっていない場所」を3つに分け、公的機関の資料で確認できる事実と、当社の整理を分けて書いたものです。当社の整理である箇所には、その旨を明示しています。

著者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修部 コンテンツ担当 佐藤 雅俊

編集責任者

DAIJOBU株式会社 Claude Code法人研修 事業責任者 石井 雄大

監修

DAIJOBU株式会社 代表取締役 山中 裕貴

公開日

2026年9月15日

最終更新日

2026年9月15日